2011-06-01から1ヶ月間の記事一覧

『鋼鉄都市』 アイザック・アシモフ  福島正実訳 早川文庫

SFミステリというジャンルを確立した文学史上に残る傑作。 未来の地球人はドームに覆われた鋼鉄都市に住んでいた。 ドーム都市に住むことで人々は広所恐怖症になっていた。普通の人々にとってドームの外に出ることはとてつもない苦痛である。そして、人類史…

『死者の代弁者』  オースン・スコット・カード 早川文庫

あの傑作「エンダーのゲーム」の続編。 軍事司令官として敵を大量虐殺してしまったエンダー少年は、 敵の唯一人の生き残りを庇護しながら、静かに生きていた。 が、生きる為には働かなくてはならない。 エンダーが選んだ職業は「死者の代弁者」、 ようは葬儀…

『ヴェニスに死す』 トオマス・マン  実吉捷郎訳

世界一のやおい文学。 腐女子に受けるには美少年×美少年だが、 醜いジジイ×美少年であるからこそ、文学的な深みが出るというものだ。

『メルヒェン』 ヘッセ  高橋健二訳

ヘッセの童話集である。 童話というものは、自分が愛されることしか考えない女子供の為に書かれる場合がほとんどだが、 硬派のドイツ人のヘッセの童話はいいですぞ、隊長! ベスト1はやはり「アウグスツス」でしょうな。 愛を垂れ流すベタベタ母親を持つ少年…

『魔の山』 トーマス・ マン  関泰祐, 望月市恵 訳

ドイツ皇帝ウィルヘルム二世が提唱した「黄禍論」に信奉した私は、 ドイツ文学に嵌っていた時期がある。 マンとヘッセは相当読んだつもりだが、 突っ込みたい作品はほとんどない。 で、「魔の山」であるが、 生真面目なドイツ人気質が感じられる良作だが、 …

『私の幸福論』 福田恆存 ちくま文庫

「幸福になりたい!」などという浅ましい欲望を所持していると、 神や仏に、「幸福になりたかったら俺様の言うとおりに生きろゴルァ!」 と脅迫されて、惨めな人生を送る破目になるので、 この手の本は読む趣味は無かったのだが、 知り合いの画家さんのお勧め本…

『ピカソ―剽窃の論理』  高階秀爾  ちくま学芸文庫

既成概念に囚われない、独創性溢れる、自由奔放な天才画家! と一般に思われているパブロ・ルイス・ピカソが、剽窃の論理でしか絵が描けなかった、 薄汚い盗作野郎であると、豊富な元ネタを提示して証明した、 美術史学上に残る会心の一作。

『揺籃の星』 ジェイムズ・P・ホーガン  内田昌之訳 創元

遂にホーガンが禁断のトンデモ科学をネタにしてしまった! 本書は既にトンデモ科学として否定されているヴェリコフスキーの「衝突する宇宙」ネタである。 金星は3500年前に木星から分離して誕生したというアレである。 SFは自己矛盾さえなければ、現実世界に…

『楽毅』 宮城谷昌光 新潮文庫

諸葛孔明が理想とした武将楽毅の生涯を気品高く描き切った傑作。 漢の高祖劉邦が好きだった武将でもあるが、 史記の描写は少なくてどこをどうすれば全四巻になるのかと危惧する諸兄は 史料は史記しかないと思い込んでる初心者である。 他にも色々ありますか…

『未来からのホットライン』 ジェイムズ・P・ホーガン 

THRICE UPON A TIME 無理すれば「夏への扉」と「マホメットを殺した男たち」と「タイムトンネル」と「復活の日」と「さよならジュピター」を足して5で割ったものが本書であると言えるかも知れない。さすがホーガン、時間論のみの時間SFではないのである。時…

『聖者の行進』 アイザック・アシモフ  池央耿訳

THE BICENTENNIAL MAN AND OTHER STORIES ・男盛り ・女の直観 ・ウォータークラップ ・心にかけられたる者 ・天国の異邦人 ・マルチバックの生涯とその時代 ・篩い分け ・バイセンテニアルマン ・聖者の行進 ・前世紀の遺物 ・三百年祭事件 ・発想の誕生全…

『はだかの太陽』 アイザック・アシモフ 

THE NAKED SUN ヒエラルキーの頂点の二万人が人間で、それ以外の労働者はすべてロボットという惑星ソラリアで、 植民以来初めての殺人事件が発生した。 ドームに覆われた鋼鉄都市に住む地球人は広所恐怖症になったが、 ソラリア人は対人恐怖症になっていた。…

『デューン砂漠の神皇帝』 フランク・ハーバート  矢野徹訳 早川

GOD EMPEROR OF DUNE 「砂丘の子供たち」から3000年後、アラキスは既に砂の惑星デューンではなかった。人工降雨により緑の惑星へと改造されていた。そして人類を導く為に人間以上の存在になる必要を感じたレト二世は、巨大なサンドウォームと化し、3000年も…

『冬の子供たち』 マイクル・コニイ サンリオ

WINTER'S CHILDRENコニイ作品でこれが一番異色作であろう。これのみが三人称で書かれており、コニイが好む青春恋愛ストーリーの香りがないのだ。本書をコニイのベスト1に押す人もいるぐらいの、色々と騒がれたあの結末。

『カリスマ』 マイクル・コニイ サンリオ

CHARISMAタイトルがタイトルですが宗教小説ではありません。安心して読んでください。コニイの描く主人公というのは結局小市民であり、自分の生活が第一であり、その範囲で善悪に悩み、恋愛を成就させようと行動するだけである。不条理を引きずって…

『ブロントメク!』 マイクル・コニイ  サンリオ

コニイの作品は小説である。伝統的なイギリス小説なのである。淡々と冷静に主人公の人生の断片を描写するもっとも小説らしい小説なのである。コニイの作品を読めるか否かという事は、その人が小説を好きか嫌いかという事でもある。コニイの作品はあまりにも…

『ドルセイへの道』 ゴードン・R・ディクスン  創元

NECROMANCER 本書の時代は21世紀、「ドルセイ!」より前のエピソードになる。ドナルが生まれた軍人惑星ドルセイにまだテラナーが植民以前のお話であり、本文中にドルセイのドの字も出てこないが、本書は「ドルセイ!」の前編ではなくて続編なので…

『ドルセイ!』 ゴードン・R・ディクスン  創元

14世紀から25世紀の人類史を描く、”貴公子の系譜”シリーズの2403年からの5年間、 エピソード7から12のどれかのお話である。(え〜い、無責任なw) それにしてもなんとストーリー展開の速いお話だったのか! 士官候補生ドナル・グレイムはこの一冊で12の恒星…

『女王国トライアングル』 川田武 角川ノベルス53-1

本書は誰でも書き易い邪馬台国の謎に挑戦した伝奇SFである。ピラミッドパワーの概念と、アホサ・クルッテルの「オリエント急行の殺人」のアイデアを盗用しただけのアイデアである。実は邪馬台国の推定地すべてが邪馬台国であった!とはさすがに言わんが、…

『ロイガーの復活』 コリン・ウィルスン  荒俣宏訳 早川

THE RETURN OF THE LLOIGOR 文学教授ポール・ダンバー・ラングは、生きて還れぬ謎の古城で遂に巡り会った最強の古書によりどうなったのか?その結末は「賢者の石」の中で述べられている。本書は「賢者の石」より前の時代のお話である。…

『コンピューター404の殺人』 エドワード・D・ホック 

THE FELLOWSHIP OF THE HAND トランスヴェクション事件から一年後、CIB局員、アール・ジャジーンは、アメリカ・カナダ合衆国大統領選挙用コンピューター”フライデー404”の点検技師に呼び出された。選挙五週間前だというのに、フライデー404は反応していた…

『コンピューター検察局』 エドワード・D・ホック  風見潤訳 早川

The Transvection Machine 21世紀中葉、アメリカ・カナダ合衆国のVIP、トランスヴェクションマシン(瞬送装置)の発明者にして防衛省長官ヴァンダー・デフォーは、医療コンピューターの執刀による虫垂炎の手術中に死亡した。コン…

『重力の影』 ジョン・クレイマー 

一応ハードSFだが、重力の影に潜む異世界を利用した出来損ないのアクション小説って感じ?

『夏・風・ライダー』 高千穂遙

どこにも長所がない最低最悪の右翼小説。 ストーリーはご都合主義に溢れているし、文章力はないし、キャラが描かれてないし、モチーフもテーマも悪いという、ヘタクソな小説の見本が本書である。ラストで意外なドンデン返しがあるじゃないか!と思う方もいる…

『小説・麻雀新選組』 阿佐田哲也 双葉ポケット文庫あ01−1

朝だ?徹夜!じゃなかった、阿佐田哲也の麻雀小説はあまりにも有名であるが、 本名の色川武大の名で中央公論新人賞、泉鏡花賞、直木賞、川端康成文学賞を受賞している事はあまり知られていないようである。本書は主人公阿佐田哲也が様々な小説家や漫画家と麻…

『女教師』 清水一行

日活で映画化もされたから、本書をポルノ小説だと思う奴もいるかもしれんが、 とんでもございません。 真面目な教育テーマの小説であり、優れた推理小説である。

『攻旗だ、無頼船よ』 西村寿行

単なる海洋アクションだと思っていたが、優れた冒険推理であり、 素晴らしい反戦小説である。 戦争の悲惨さ、国家の為に死ぬことの馬鹿馬鹿しさ、脱走兵の素晴らしさ、 男のいやったらしさ、人種や文化の違いはあっても人間はすべて平等であり、 命は尊いも…

『下町探偵局〈PART2〉』 半村良

本書は東京の両国(半村良の生まれ育った所だ)で探偵局を開業した 下町(シモマチ)誠一と、彼の部下たちがあやなす人情劇である。 フィリップ・マーロウ、リュウ・アッチャー、サム・スペード等にあこがれてみても、 彼らはあまりにも遠い存在であり、 安楽椅…

『煙草屋の密室』 P・ラヴゼイ 中村保男 他訳

Butchers and Other Stories of Crime・肉屋 Butchers 中村 ・ヴァンダル族 Vandals 中村 ・あなたの殺人犯 The Corder Figure 菊池よしみ ・ゴーマン二等兵の運 Private Gorman's Luck 高見浩 ・秘密の恋人 The Secret Lover 中村 ・パパに話したの? Did Y…

『パブロ・カザルス喜びと悲しみ』 A・E. カーン 吉田秀和, 郷司敬吾訳 朝日選書

名文句が大量にあるので、アメブロ版は分載としたが、 ここの字数制限を確かめる為に一つにまとめてみる。 パブロ・カザルス「お母さん、あなたはとても美しい人ですよ。宝石を指にはめてみてはどうですか、真珠のブローチもいいと思うけど。ぼくに贈り物を…