『揺籃の星』 ジェイムズ・P・ホーガン  内田昌之訳 創元

遂にホーガンが禁断のトンデモ科学をネタにしてしまった!
本書は既にトンデモ科学として否定されているヴェリコフスキーの「衝突する宇宙」ネタである。
金星は3500年前に木星から分離して誕生したというアレである。
SFは自己矛盾さえなければ、現実世界には存在出来ない間違った理論で世界を構築してもいいが、
キリスト教条主義のヴェリコフスキー理論を正当化する屁理屈を考えるとは、
ホーガンにしては頭の無駄遣いである。
天文学の間違いを電磁力学で修正して説明しようとする力技を見せるが、
さすがのホーガンでもこれは無茶すぎたw
無理して褒めれば「星を継ぐもの+断絶への航海+創世記機械/3」と言えなくはないが、
イデアとテーマで読ませるのは上巻のみで、下巻は単なるパニック小説アクション小説に成り下がった失敗作。
まあ、「彗星が地球に衝突する!」ものとしては、掟破りの結末というか、
ホーガンの理想社会(今回はクロポトキン共産主義を発展させる)に賛同しない
悪意が土台の社会など滅びてしまえ!
と地球がアボーンしてしまうのは、ある意味小気味良かったがw

自作が映画化失敗した恨みをいまだに根に持っているのか、

小説の中で何度も、「現実は映画のように御都合よく展開しない」

という意味のフレーズが出てくるのは笑たよw

三部作の一作目だから見捨てるのは早いですぞ諸君!

ネタがヴェリコフスキー理論と聞いて、脱力したハードマニアが相当いたみたいだが、

宇宙人とか超能力とかいう現実には存在しないものを扱っていいのがSFざんすよ。

センスオブワンダーに挑戦したホーガンの意気込みは褒めてやろうよ。

恐竜ネタもソウヤーの「さよならダイノサウルス」と被っているし、

「さよならダイノサウルス」より早く出版されていたら本書はもっと高評価を受けたであろう。