2012-05-01から1ヶ月間の記事一覧

『黄昏に眠る秋』 ヨハン・テオリン 早川ポケミス

序盤は本格推理ではなくて歴史文学ぽい。 1970年代の5歳の少年の失踪事件が語られ、 1990年代の少年の母の苦悩が語られ、 1930年代の容疑者の人生の語りが始まる。父を名前で呼び捨てにする主人公のキャラはいいが、主人公は幽霊信じてるので脱力して挫折し…

『ふたり、幸村』 山田正紀 徳間書店

陳舜臣の『秘本三国志』のあっと驚く謎の解決方法を更に捻った大傑作。実にして虚、虚にして実、仁にして義にして礼にして智にして信、軍師小説の最高傑作宮城谷昌光の『晏子』にも匹敵する大傑作。SF作家でもある正紀にしか考え付かない地球規模の凄いトリ…

『恐喝―シンガポールウインク』 ロス・トーマス 立風書房

本作の主人公は元スタントマンの中古車販売業者、敵はマフィアと思わせて、もちろん国家権力のスパイ組織も敵。 主人公の父が超一流スタントマンで主人公はスタントの英才教育を受け、12歳で車の運転を、14歳で飛行機の操縦を覚えて、ハリウッドNo1のスタン…

『ポークチョッパー:悪徳選挙屋』 ロス・トーマス 立風書房

本作の主人公は労働組合委員長。敵は大統領直属の謎の組織。委員長の選挙戦をリアルに描写したかったらしく、ロス・トーマスお得意の複雑でイリーガルな謀略戦が発動するのが遅く(殺し屋は最初から登場してるけど)、これはロス・トーマス作品としてはやや劣…

『可愛い娘』 ロス・トーマス 立風書房

民間人(本作は新聞記者)が政府権力(本作は上院議員)の陰謀に立ち向かうという、いつもの非国民作家ロス・トーマスの魅力爆発の作品である。主人公は食う為に新聞記者しているが、夢は歴史家、大学教授であり、探偵としての調査能力は抜群であるが、武力は0。…

『ディーン牧師の事件簿』 ハル・ホワイト 創元推理文庫

「プロローグ」 「足跡のない連続殺人」 「四階から消えた狙撃者」 「不吉なカリブ海クルーズ」 「聖餐式の予告殺人」 「血の気の多い密室」 「ガレージ密室の謎」21世紀に甦った黄金本格推理とマンセーするべきだが、本格推理としては無駄な人間描写が私…

『美しい蠍たち』 山田正紀 トクマ・ノベルズ

蠍のような毒婦たちの騙し騙され殺し殺されのコンゲームデスゲームユーモアミステリ。セリフのある登場人物は全て女という、男無視の痛快なノワールとも言える。男よりお金が好きな峰不二子タイプばかりが熾烈に知恵を巡らせる謀略小説とも言えます。ミステ…

『音もなく少女は』 ボストン・テラン 文春文庫

本書のベストセリフ「あなたはまだ二十四でしょ?大事にしなくちゃならない真実なんて、あなたの人生にはこのあともいやになるほど残ってるわよ」もう一丁行くぜ!「ふしだらな女は当然の報いを受ける。だから、彼らはそんな嘘を利用したのよ。なぜなら、この…

『砂のクロニクル』 船戸与一 新潮文庫

本書のベストセリフ「何が望みだと?個人的な利益なんか考えるわけがない!」サミルかっこええよ、サミル、(;´Д`)ハァハァ。 凄いドラマツルギーの傑作。会話はへたというか、行数稼ぎの疑問詞の合いの手が多くて鼻につくが、予定調和にならない怒涛のストーリー…

『犬の力』 ドン・ウィンズロウ 角川文庫

本書のベストセリフ「魂など救済せんでよろしい!メキシコ人を救済しなされ!」もう一丁行くぜ!「算術こそが紛れもない宇宙の法則である。数学的な証明だけがただひとつの証明である」ミステリだが本格推理ではなくて、文学寄りのノワール。 過去形を使わず現…

『赤い矢の女』 山田正紀 徳間ノベルズ

密室での人間消失で始まるので本格推理かと思ったら、パズラー度は薄い感じで、トラベルミステリーというか、サスペンスですな。日本国内ウロウロするだけでは、凡百のトラベルミステリーだが、天才正紀なので、下巻はソ連国内へ!取材に基づくリアルなソ連国…

『探偵稼業はやめられない』 マイクル・コナリー他 光文社文庫

1「フォト・フィニッシュ」 サラ・パレツキー(V・I・ウォーショースキー)(Photo Finish)2「空の青 (シエロ・アズール)」マイクル・コナリー(ハリー・ボッシュ)(Cielo Azul)3「スカーレット・フィーバー」 ジャン・グレープ(ジェニー・ゴードン&C…

『ダック・コール』 稲見一良 ハヤカワ文庫JA

珠玉のハードボイルド冒険メルヘン短編集。「密猟志願」が一番のお気に入り。 10歳の天才密猟少年に弟子入りした中年男の物語。普通の作家なら作家を投影していると思われる中年男が自分で 様々な密猟テクニックを発明する話になるだろう。作家自身にも主人…