『ふたり、幸村』 山田正紀 徳間書店

陳舜臣の『秘本三国志』のあっと驚く謎の解決方法を更に捻った大傑作。実にして虚、虚にして実、仁にして義にして礼にして智にして信、軍師小説の最高傑作宮城谷昌光の『晏子』にも匹敵する大傑作。

SF作家でもある正紀にしか考え付かない地球規模の凄いトリックも爆裂します。
正紀の持論は信長は天才ではない、ただの殺人鬼というものだが、本作では秀吉も家康も英傑扱いはしてません。
三英傑が居たから戦国時代が終焉して天下が統一されたのではない、天下統一は誰でも可能だったという素晴しい説を提示しておられます。

時代小説なのにマジックリアリズムの手法を導入し、凄い不思議なワクワクするシーンもあります。
そのシーンの感動はマジックリアリズムと正紀は自称しているが、
アーサー・C・クラークのハードSFの描写の感動に近い。

『ふたり、幸村』と言う題は真田信繁の異名が真田幸村という定説を否定し、
信繁の影武者として幸村という三男坊が居たということです。

幸村の少年時代から物語が始まり、死ぬまでを詰め込んでいるので、
大傑作なのに、短過ぎて物足りないと思う諸兄もいるかもしれないが、
天才の正紀には書きたい事が無限に湧いてくるので、
無駄な引き伸ばしはしないのが正紀ティストである。
普通の作家ならこのネタなら四倍の長さになると思う。

幸村も父の昌幸も武将というより軍師として描写されており、
この物語の時点では死んでる筈の戦国時代の超有名な軍師も、
実は生きていた!と登場するのでお楽しみに。
無駄を切り捨てる正紀なので、真田十勇士は8人しか出て来ませんが()
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