山田正紀全作品感想

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『ファイアーウォール』 ヘニング・マンケル 創元推理文庫

相変わらずジェンダー観が素晴しい!30年間の警察生活で取調べ室で一度も容疑者に暴行加えたことのない主人公が、初めて犯人を殴打するエピソードに拍手喝采した。 イカツイ怖い警官というよりも、気の良いおっちゃんの風貌を持つ、心優しき紳士の主人公が、…

『親子で学ぶ数学図鑑:基礎からわかるビジュアルガイド』 キャロル・ヴォーダマン 創元社

人間の頭の中にしか存在しない数学世界を、ビジュアルに図鑑として図説する天才的発想の本。2P見開きカラーで立体的に数学の概念が具象化され見てるだけで楽しい。リアルに役立つ数学コラムは大人にも参考になる。基本的に算数ネタだが、一部高校教科書ネタ…

『創るセンス 工作の思考』 森博嗣 集英社新書

本書のベストセリフ 「何もかもがつまらない」 「それは君がつまらない人間だから」正確には悩みを相談してくる若者に答えられなかった言葉であるが、相談者が傷ついて自殺しないようにと言わない森先生の配慮は素晴しい! 本で書いてしまっては遠回しに自殺…

『盗まれた貴婦人』 ロバート・B・パーカー ハヤカワ・ミステリ文庫

スペンサーシリーズ38作目。17世紀オランダ絵画黄金時代のヘルメルゾーンの『貴婦人と小鳥』が盗まれた。身代金引渡し役の美術史家に依頼されて彼の護衛についたスペンサーだが、取り返した筈の絵は爆弾、美術史家はスペンサーの目前で爆殺されてしまう。美…

『進化しすぎた脳』 池谷裕二 講談社ブルーバックス

ブルーバックスにしては厚めだが、高校生相手の講演録なので、平易な話し言葉で書かれているので、サクサクと一気読み出来る。著者が自画自賛してるが、厭味にならずに本当にグルーヴ感が素晴しい。☆5付けたいくらいだが、量子力学とポストモダン思想に汚染…

rook貼り付けテスト

『天使のゲーム』 カルロス・ルイス・サフォン 集英社文庫

上巻のベストセリフ 「副詞をふんだんにつかったり、やたらに形容詞をつけたりするのは、倒錯者か、ビタミン不足の人間のすることだ」文学的過剰を否定した素晴しいリーダビリティの文学。スペイン版『二流小説家』←褒めてます。綺麗なねーちゃんが活躍する…

『面白くて眠れなくなる数学』 桜井進  PHP研究所

四色問題等の有名なネタが多いが、著者の数学への愛が感じられる良書。数学は音楽のように美しくて面白いものであると爽やかに教えてくれる良書。最新ネタは超複素数八元数まで出て来ます。十六元数は成立しない。数学史の正史では小物の悪役のクロネッカー…

『史上最大の発明アルゴリズム―現代社会を造りあげた根本原理』 デイヴィッド・バーリンスキ 早川文庫NF

数学解説本かと思ったら、著者の短編小説も埋まってるトンデモ本。小説が挟まる構成は、ダグラス・R・ホフスタッターの『ゲーデル,エッシャー,バッハ―あるいは不思議の環』もそうであり、小説仕立てで数学解説するのも手ではあるが、ダグラス・R・ホフスタッ…

『自己愛な人たち』 春日武彦 講談社現代新書

古臭い男性ジェンダーを超越している素晴しい春日武彦先生の、自己愛に囚われたおかしな人についての痛快毒舌エッセイ。自分の患者だけでなく、小説家や画家もネタにしているが、有名画家や教科書に載るクラスの文豪に対してもボロクソ言っていて面白い。他…

『プロフェッショナル』 ロバート・B・パーカー 早川ミステリ文庫

スペンサーシリーズ37作目。本書のベストセリフ「マサチューセッツ州はゲイ問題に関しては昔から寛容だった」 「彼女を大切に思ってる。私たちはすべてを共有する、セックス以外。これからの生涯、ずっと彼女といたい」ホモの男性とヘテロの女性の夫婦愛に感…

『奇妙な情熱にかられて ―ミニチュア、境界線、贋物、蒐集』 春日武彦 集英社新書

奇妙な物を蒐集する奇想を論考し、生活感のリアリティを高らかに謳う人間賛歌の傑作。モナリザより、コルゲンコーワの店頭人形の方に熱いメッセージを感じる人達が存在する意義を照射する芸術論人間論の傑作。健全な人間よりキ○ガイの方が奥深くて面白いとい…

『ミステリアス・ショーケース』 デイヴィッド・ゴードン他 早川ポケミス

2011年に人気大爆発した現代アメリカミステリ作家達の最新作を集めた豪勢なアンソロジー。純文学寄りのノワールからエンタメに回帰しつつある最新事情に触れ感動して下さい。エンタメの妄想力の凄さに驚愕しろ!本格推理と言うよりは純文学寄りでトリックの…

『海賊とよばれた男』 百田尚樹 講談社

出光興産の創業者をモデルにしたノンフィクションノベルだが、感涙のエピソードの連続。私利私欲を求めず、国家国民の為に、政治家も軍人も官僚も大企業も敵に回す主人公が凄い。今年のNO1本に決定。GHQにも逆らってGHQを感心させて味方にした日本人って出光…

『解錠師』 スティーヴ・ハミルトン 早川ポケミス

本書のベストセリフ「美術学校へ行くとどうなるか知っているか? きみには生まれながらのすばらしい技法がある。精巧な描写力がね。やつらはそれを叩きつぶす。きみの力に圧倒されるあまり、キャンバスに絵の具を猿みたいに投げつけろと命じるんだ。卒業する…

『鋼の魂 僕僕先生』 仁木英之 新潮社

僕僕先生シリーズ6作目。今回久し振りに僕僕が男に変身して萌えた。月の女神嫦娥の再登場も嬉しい。嫦娥の部下の蛙の妖怪の准遼が可愛くてタマラン。う〜ん癒されます。ヒロインは准遼にして僕僕は美少女に変身するのは止めて欲しい(ごめんなさいごめんなさ…

『虹の解体―いかにして科学は驚異への扉を開いたか』 リチャード・ドーキンス 早川書房

どの本でもグールド批判があるのがドーキンスだが、これは酷い。グールドを疑似科学者、文が巧いだけのサイエンスライターとコケおろしています。まともな進化論学者はグールドの説なんか支持しないが、進化論全面否定の聖書原理主義者とグールドは戦ってく…

『問題は、躁なんです 正常と異常のあいだ』 春日武彦 光文社新書

良いとされる男性的ジェンダーを躁病と揶揄する傑作。男性的とされる能動性外向性行動力自信を持ってテキパキと判断する資質って、実は躁病と同義。 人間の精神はうつが基本。 精神病はうつ病→躁病と悪化していく理論に大納得しました。 躁病の気質が必要な…

『夜明けのパトロール』 ドン・ウィンズロウ 角川文庫

21世紀の新シリーズなので、ジェンダー観が進化しており素晴しい!主人公はサーファー探偵だが、実は恋人の方がサーフィンの能力が高い。女に負けても恥とも屈辱とも思わず女を支援する主人公がかっちょええ!恋人がプロサーファーに成れるかの重大な日に、海…

『感性の限界――不合理性・不自由性・不条理性』 高橋昌一郎 講談社現代新書

序盤の、無意味な数字に引きずられて不合理な判断してしまうアンカリング、 脳の中に心(判断システム)は二つ(利己的遺伝子に有利に働く心と個体に有利に働く心)ある。 との話題に引き込まれて一気読み出来るが、 限界シリーズの最後を飾るには、ネタが残って…

『暗号解読』 サイモン・シン  新潮文庫

もし彼が存在しなかったら、第二次世界大戦はあと3年は続き、更に何千万人もの犠牲者が出たであろうと推測される、世界史最大のヒーローが、1952年警察に逮捕された。罪名は「同性愛」。世界征服を企む悪のナチスドイツの究極の暗号エニグマを解読し、連合国…

『意味がわかれば数学の風景が見えてくる』 野崎昭弘 他 ベレ出版 

『微分積分』『数と計算』『図形空間』『統計確率』の意味が判るシリーズ4冊の合本。全てのネタを2Pにまとめているので、ショートショートの小説のように読み易いとも言えるが、個々のネタの判り易さ、面白さ、センスオブワンダーにはやはり波があって、被っ…

『ディメンショングリーン(1)〜(3)』 佐々木 淳子 eBookJapan

コミケには出遅れたが、電子書籍として売ってたのでDLして読んだ。 世界一のSF漫画家佐々木淳子のダークグリーン第三部である。 今度の主人公は第二部ディープグリーンの主人公と同じ高校に通っていたOBの青年。職業は無職のホームレス!超能力者としては的中…

『奇跡の巡洋艦』 ダグラス・リーマン 早川文庫NV

本書のベストセリフ「女性には選択する権利がなければなりません。人が子供をつくるのには、ドイツ国家のために兵隊と母親をつくりだすということよりももっとましな理由があるはずです」戦争小説なのにジェンダー観が素晴しい異色の作品。そして、イギリス…

『先生の隠しごと―僕僕先生』 仁木英之  新潮社

僕僕一行は肌の色も目の色も違う異民族達が仲良く暮らしている理想郷に辿り着く。 建国者の王様が光の国と自称するそこは、法律もなく、 どんな職業に就いても良いし、就かなくても、食料も酒も配給される夢のような理想郷。 ニートの王弁クンの理想の地と思…

『推定無罪』 スコット・トゥロー 文春文庫

裁判が始まる前の200Pはミステリというよりも、人物を丹念に描く純文学。 主人公の息子の少年野球の試合の模様がミステリとしての伏線になるとは思えないが?序盤は退屈で寝てしまうが、裁判が始まったら面白くなりすぐ読了。すぐ下巻へ。下巻は一気読み。…

『東大生の論理― 「理性」をめぐる教室』 高橋昌一郎 ちくま新書

高橋先生が東大教官時代に、教え子の東大生をネタにして書いた一気読みのエッセイ。 クラスの君達一人一人に1万円か千円をプレゼントする。欲しい方の金額を書き給え。ただしクラスの20%以上が1万と書いたら、プレゼントは無しだ。もちろん相談は認めないの…

『友を選ばば』 荒山徹  講談社

ダルタニアン&柳生十兵衛、17世紀の最強タッグ完成! 敵は世界征服を企むケルト妖術師!?ねえ、朝鮮は、朝鮮ネタは(゚Д゚≡゚Д゚)ドコドコ?荒山先生が始めて朝鮮ネタの無い小説を書いた。朝鮮人にしか意味の無い朝鮮の歴史の薀蓄が無いのでリーダビリティは荒山作品…

『「戦後」を点検する』 保阪正康 半藤一利 講談社現代新書

反日半藤と弟子(?)の保阪の漫才対談集。天皇に敬語を使わず「天皇は言った」等の文を書いたのは半藤が先駆けで、自慢する半藤に保阪が「半藤さんの『日本のいちばん長い日』では一箇所敬語使ってる!」と突っ込むのが一番受けた。 全学連運動の考察で、今は右…