『恐喝―シンガポールウインク』 ロス・トーマス 立風書房

本作の主人公は元スタントマンの中古車販売業者、敵はマフィアと思わせて、もちろん国家権力のスパイ組織も敵。
主人公の父が超一流スタントマンで主人公はスタントの英才教育を受け、12歳で車の運転を、14歳で飛行機の操縦を覚えて、ハリウッドNo1のスタントマンになったが、No2スタントマンの事故死に自分の責任を感じて心を病んで引退。

父の遺産の高額アンティークカー21台を元手に中古車屋になるわけだが、車への愛着がないのが素晴しい。
更に共同経営者は車を買う奴は頓馬だと思ってる4マイルも毎日歩く素晴しいジェンダー観の男。
男は大きな車を乗り回し大きな家に住み大きな犬を飼わなければいけないというジェンダー観を揶揄する傑作。
もちろん、ホモも出ます(;´Д`)ハァハァ

主人公は元一流スタントマンなので、格闘能力は抜群だが、
民間人なので銃の扱いはヘタ。
というか、暑いシンガポールが舞台になるので、銃を隠す上着を着ずに、
基本的に銃は携帯しない。

敵が銃を使用してくるので、主人公に銃をプレゼントする味方も現れるのだが、
紙袋に入れた銃を忘れるシーンは微笑ましい。

敵と味方の立ち位置が終盤ぐるぐる変わるのがロス・トーマス作品なので、
迂闊に銃で敵を殺しても、実は味方だった可能性もあるから、
この作品の銃を使わない主人公はいいよな。

大ピンチが一瞬で大チャンスに変化する醍醐味がロス・トーマス作品。

誰が本当の味方なのか敵なのか、じっくり推理して読んで下さい。

それでも騙されて作者に拍手喝采するであろう。

恐喝―シンガポールウインク (1976年)

恐喝―シンガポールウインク (1976年)