『ファイアーウォール』 ヘニング・マンケル 創元推理文庫

相変わらずジェンダー観が素晴しい!

30年間の警察生活で取調べ室で一度も容疑者に暴行加えたことのない主人公が、初めて犯人を殴打するエピソードに拍手喝采した。
イカツイ怖い警官というよりも、気の良いおっちゃんの風貌を持つ、心優しき紳士の主人公が、怒りを我慢できず、ぶっ飛ばして床に倒れさせた残虐非道極悪非情の犯人は、14歳の美少女!!

普通の小説なら可哀想な被害者、容疑者にされても、悲しい理由があるヒロインに祀り立てられるところだが、さすがマンケルである。

人口2万人のスウェーデンの田舎町で発生したタクシー強盗殺人事件が、五大陸全てに絡む国際的陰謀に発展していく面白さ!
マンケルの本領発揮の傑作である。
敵の国際秘密結社のスケールは今までで一番凄い!!
敵組織の目的は世界の破壊である。

謎の組織の正体を探る過程で、悪の敵組織候補として、マフィア、テロリスト、カルト宗教団体、国家諜報機関のみにとどまらず、動物愛護団体環境保護団体まで候補になるのが、さすがマンケルである。

過去の美少女強姦事件も出て来るが、その犯人と主人公は対決しないのも素晴しいジェンダー観である。

ファイアーウォール 上 (創元推理文庫)

ファイアーウォール 上 (創元推理文庫)

ファイアーウォール 下 (創元推理文庫)

ファイアーウォール 下 (創元推理文庫)