2012-06-01から1ヶ月間の記事一覧

『リーマン博士の大予想』 カール・サバー, 黒川信重 紀伊国屋書店

与えられた自然数に対し、その数の中に素数が幾つあるかを計算するゼータ関数の零点の解となる、複素数の実数部は全て1/2である。というのがリーマン予想。素数の分布を探すのに複素数が必要になるのも凄いが、零点になる1/2の位置の数直線上の虚数部の分布…

『徳川家康 トクチョンカガン』 荒山徹  実業之日本社

本書のベストセリフ 「お江与を見る秀忠は、美しいものを仰ぎ見る、ただそれだけの純粋な目をしていた。男が女を所有物としてしか考えないこの時代、こんな目で女を見る男が、ああ、誰か他にいるとは迚も思えない」例によって時代を超越したジェンダー観が素…

『数学的にありえない』 アダム・ファウアー 文春文庫

一番最初の統計学の講義で、いきなり数学ギャグが爆裂し、笑えるんだが、理系の真面目な人は「数学的に間違ってる!」と怒り狂って本書の評価は低くしそうだが、エンタメとして水準以上。「パスカルの賭け」を否定する論理には大共感した。「数学的にありえな…

『仮面戦記』 山田正紀 徳間ノベルズ

本書のベストセリフ 「信長にしろ、秀吉にしろ、しょせんは人の領地を奪いとろうとする盗人にすぎない。そんな欲ボケが、なんで上等な人間であるものかよ、どんなに大義名分をおしたてたところで、盗人は盗人であり、人殺しは人殺しにすぎないのだ」戦国時代…

『ストリート・キッズ』 ドン・ウィンズロウ 創元推理文庫

ニール・ケアリーシリーズ第一作。ドン・ウィンズロウのデビュー作で、プロットがややこなれてない印象を受けたが、 18世紀の英文学を教える大学教授になる事を夢見る大学院生が探偵役の、 主人公のキャラが斬新なハードボイルド。 闘うより逃げるのが得意で…

『科学哲学のすすめ』 高橋昌一郎 丸善

新書の『〜限界』シリーズと被ってるネタもあるが読んで損は無い。 不完全性定理の説明は、林晋より、ダグラス・R・ホフスタッターより、野崎昭弘先生より判り易いナイスなアナロジーが登場します。自然科学や哲学の難しい問題を判り易く説明するのは、高橋…

『完全なる証明―100万ドルを拒否した天才数学者』 マーシャ・ガッセン 青木薫訳 文春文庫

ポアンカレ予想を証明したペレルマンの伝記だが、まさか、野崎昭弘先生が出て来るとは!狂喜しました。 ただし、日本版のみ。数学パズルが2問埋まっているが、原著では答えが書かれてなかったらしく、訳者の青木薫女史は解けなかったので、野崎昭弘先生に解い…

『装甲戦士〈2〉戦艦奪回指令OZ』 山田正紀 ノン・ノベル

戦争賛美も反戦も超克し、物語は滑稽文学として開花!?短小包茎のチンコを勃起させて死んで行く味方等、笑いに満ちた戦闘シーンが素晴しい!!スーパーナチュラルとの直接の戦闘はないまま終わったが、続きが書かれれば、神=究極の戦闘との戦闘が有り得るかもし…

『装甲戦士1ベトナム戦線マル秘出動令』 山田正紀 ノン・ノベル

パワードスーツものはハインラインもホールドマンもベトナム戦争を想起させるが、ベトナム戦争をネタにするなら、そのままベトナム戦争にパワードスーツを登場させるのが、素直な解釈。SFだからと宇宙人を敵にしない正紀の天才性は素晴しい。 宇宙人というか…

『「知」の欺瞞――ポストモダン思想における科学の濫用』 アラン・ソーカル, ジャン・ブリクモン 岩波現代文庫

無理数と虚数の区別がついてないラカン、 有限集合{0,1}と無限集合区間[0,1]の区別がついてないクリステヴァ、 無限小と極小の区別がついてないドゥルーズ等、 フランスの馬鹿な思想家の化けの皮を剥がした傑作。認識論的相対主義批判の章では、世界一の科学…

『統計・確率の意味がわかる―数学の風景が見える』  野崎昭弘他 ベレ出版

高校生以上を対象にした基礎の基礎の入門書。 各ネタは2ページで無理やりまとめていて、ショートショート小説のように読み易くて一気読み出来るが、多変量解析は主成分分析までで、重回帰分析には触れてない。 高校の数学を忘れてしまった人の復習用には良い…

『サイモン・アークの事件簿Ⅲ』 エドワード・D・ホック  創元推理文庫

「焼け死んだ魔女」 「罪人に突き刺さった剣」 「過去から飛んできたナイフ」 「海の美人妖術師」 「ツェルファル城から消えた囚人」 「黄泉の国への早道」 「ヴァレンタインの娘たち」 「魂の取り立て人」の8編が収録されてます。「過去から飛んできたナイ…

『血と夜の饗宴(サバト) 』 山田正紀 広済堂ブルーブックス

47階建ての青山ハイタワーの秘密に挑む女達の冒険ハイテクホラーオムニバス。 主人公が負けて二代目三代目と死に続ける斬新なパターン。 四代目の女が男達を部下にして、47階からガラスの階段を使うトリックが、福本伸行の『カイジ』の鉄骨渡りレースを想起…

『灰色の嵐』 ロバート・B・パーカー 早川ミステリ文庫

スペンサーシリーズ36作目。本書のベストセリフ「彼は若すぎた。ヒロイズムが要求され、かつヒーローが殺されない映画を観すぎている」マスゴミ批判、若者揶揄、素晴しいジェンダー観と3拍子揃った安定したいつものスペンサーシリーズ。章立てが多く会話ばか…

『虚無回廊』 小松左京 ハルキ文庫

世界連邦政府が樹立した未来(22世紀?)、太陽系から5.8光年の虚空に直径1.2光年全長2光年の円筒型天体が出現した。構造上自然の天体では有り得ない。連邦政府は有人調査隊を送り込みたいと思ったが、人類のテックレベルは低過ぎた。有人恒星間ロケットの開発…

『エージェント6』 トム・ロブ・スミス 新潮文庫

世界征服を企む悪のナチスドイツの首都ベルリンに突入し、世界史1の悪ヒトラーを自殺に追い込んだソ連軍は正義の組織である。ソ連は社会主義という人類の理想を顕現した地上の楽園である。世界征服を企む悪の資本主義帝国国家アメリカの差別される黒人がソ連…

『螺旋の月―宝石泥棒2』 山田正紀 ハルキ文庫

『宝石泥棒』の続編でファンタジー世界から舞台は宇宙になると思い込んでいたが、序章は人類が滅亡してから400万年後の地球の支配者蛸人間の話である。人間以外の知的存在を描写出来るのはSFしかない。これぞSFやねと狂喜しますた。で続編として前作の主人公…

『背後の足音』 ヘニング・マンケル 創元推理文庫

本書のベストセリフ 「ホモセクシャリティは倒錯傾向という言葉に当てはまらない。1950年代なら、そういう表現が使われたかもしれないが、現代では倒錯とは言わない。人々が自分の性的嗜好を隠すことは倒錯とは関係ないことだ」やはり現代スウェーデン作家の…

『詩的私的ジャック』 森博嗣 講談社文庫

本書のベストセリフ 「先生は、女性が社会に出て仕事をすることを、どう思われますか?」 「どうも思わないね」 「そもそも、男女平等と職業とは無関係だ。つまり、男と対等になるために、仕事をするなんてナンセンスだと思う。それでは、仕事をしている者が…