『虚無回廊』 小松左京 ハルキ文庫

世界連邦政府が樹立した未来(22世紀?)、太陽系から5.8光年の虚空に直径1.2光年全長2光年の円筒型天体が出現した。構造上自然の天体では有り得ない。連邦政府は有人調査隊を送り込みたいと思ったが、人類のテックレベルは低過ぎた。有人恒星間ロケットの開発に先行して、人工知能搭載船を発射するしかない。だが、宇宙人とのコンタクトを考えると人工知能は心もとない。連邦政府人工知能を超える人工実存(魂を持つロボット)の研究者をプロジェクトに招き、彼の人格をコピーした"彼"を片道飛行で飛ばす。
超構造体SSに辿り着いた人工実存HEは、HEの人格元の人間の彼が死んだ事により、死を体験し、死んでからも人間の命令に従う義理はないと、人類からの通信を遮断し、任務ではなしに、自分の意志でSSの探索を開始する。SSにはHE以外にも様々な太陽系外知性体が調査に訪れていた。宇宙人が作った機械知性を部下にし、百もの宇宙種族が跋扈するSS内でのHEの冒険が始まる!

未完だとは承知していたが、虚無回廊って何?という疑問は解消されて終わってるので、それなりに納得出来る未完である。
人間主人公の死後人工知能主人公になる凄い話ではある。
宇宙人同士は必ず遭遇し意思疎通可能という小松氏の理論は楽天的過ぎて本格SFとしてはどうかと思うが、冒険SFとして楽しむ本か?
小松作品としては珍しくジェンダー問題が埋まってるのは良かった。
文系SF作家として哲学への期待が大き過ぎるのは瑕疵だと思った。
実数虚数の上位にある第三の数の考察にもっと力を入れて欲しかった。 章題にiが付いているのは数学SFとしてかっちょええですが。

虚無回廊〈1〉 (ハルキ文庫)

虚無回廊〈1〉 (ハルキ文庫)

虚無回廊〈2〉 (ハルキ文庫)

虚無回廊〈2〉 (ハルキ文庫)

虚無回廊〈3〉 (ハルキ文庫)

虚無回廊〈3〉 (ハルキ文庫)