2012-04-01から1ヶ月間の記事一覧

『46年目の光―視力を取り戻した男の奇跡の人生』 ロバート・カーソン NTT出版

本書のベストセリフ「こんなことを言う女は、私が歴史上はじめてかもしれないけど、運転の仕方を夫に批評されるのって最高ね」なぜならば夫は46年間失明していたから!批評される行為、批評する能力の存在のありがたみに気付かず打たれ弱い人は、五感全て持っ…

『ファイナル・オペラ』 山田正紀 早川

ナヨナヨした美少年が三人も出て来るジェンダー観も素晴しい21世紀の本格推理小説。3.11以後に書かれた為か、純粋の知的ゲームに徹しきれず、罪なき子供が災害や戦争で殺される事への正紀の憤りが透けて見えて、ちょっと重くてエンタメとしては爽快感にやや…

『真鍮の評決 リンカーン弁護士』 マイクル・コナリー 講談社文庫

本書のベストセリフ「その情報を与えることはできないが、容易に想像できるだろう」読む楽しみを奪ってはアカンので、詳しい情報を与えることはできないが、うっとおしい文学ではなくて、本質はエンタメの本格推理作家のコナリーなので、面白いことは容易に…

『離散系の数学 (コンピュータサイエンス大学講座)』 野崎昭弘 近代科学社

30年前に大学テキストとして書かれた本で、練習問題が豊富(答えだけで16Pもある)なので、数学パズル本として楽しく読める。巡回セールスマン問題や一筆書き問題も出て来ます。大学生向けだが、整数論、代数学、グラフ理論がメインなので、中学生でも解ける問…

『素数に憑かれた人たち ~リーマン予想への挑戦~』 ジョン・ダービーシャー 松浦俊輔訳 日経BP 

wikiでも直ってないリーマンの論文名の昔の誤訳の定訳「与えられた数より小さい素数の個数について」が、 「与えられた量より小さい素数の個数について」と正しく訳されているのが素晴しい!連続する変化量を扱わない離散数学である数論に、解析学の概念を導…

『天動説〈2 蝦夷伝奇編〉』 山田正紀 カドカワノベルズ

天保時代で開幕したこのシリーズだが、なんと、明治時代、日露戦争秘話として閉幕。吸血鬼と戦い続ける一族の話だとして落ちました。 正紀版ジョジョの奇妙な冒険だったのか!?漫画や映画のお約束を破り、超絶能力対超絶能力にはならず、吸血鬼に対して駆逐艦…

『天動説〈1 江戸幻想編〉』 山田正紀 カドカワノベルズ

大江戸ヴァンパイア小説。 4つの短編のオムニバスである。 ヒロインに思われた美少女が呆気なく死ぬのはさすが正紀。 主人公は鉄太郎かと思ったら、主馬が主役張る話もあって、二人主人公かと思ったら、主馬はなんと! 次巻が楽しみである。天動説〈1 江戸幻…

『二流小説家』 デイヴィッド・ゴードン 早川ポケミス

21世紀の新世代作家として、ジェンダー観が素晴しい。 主人公の中年作家探偵が2回も女装する素晴しさ! 作家が主人公という事で、小説論や芸術論も語られるが、共感出来る良い論旨であった。 序盤テンポが遅いが、終盤のドンデン返しの嵐は見事。 最後のペー…

『πの話』 野崎昭弘 岩波現代文庫

野崎先生が総和級数(繰込み理論)を間違えていてアレっ?と思ったら、文庫化前の単行本は30年以上に出版されてました。この文庫版では最後に書き足して間違いを訂正しておられます。 書き足すのではなくて書き直して過去の間違いを隠蔽しない野崎先生の真摯な…

『キール港の白い大砲』 ダグラス・リーマン ハヤカワ文庫NV

本書のベストセリフ「おれに必要なのは犬だけだ」 「女は?」 「ああ、たぶんいつかは」口とペニスしかない野蛮な男が大好きなセクス=愛を揶揄し、犬に象徴される友情、遊び心をマンセーした戦争文学。ナチドイツ降伏で物語りは始まるので戦争冒険小説ではあ…