海外ミステリ

『盗まれた貴婦人』 ロバート・B・パーカー ハヤカワ・ミステリ文庫

スペンサーシリーズ38作目。17世紀オランダ絵画黄金時代のヘルメルゾーンの『貴婦人と小鳥』が盗まれた。身代金引渡し役の美術史家に依頼されて彼の護衛についたスペンサーだが、取り返した筈の絵は爆弾、美術史家はスペンサーの目前で爆殺されてしまう。美…

『天使のゲーム』 カルロス・ルイス・サフォン 集英社文庫

上巻のベストセリフ 「副詞をふんだんにつかったり、やたらに形容詞をつけたりするのは、倒錯者か、ビタミン不足の人間のすることだ」文学的過剰を否定した素晴しいリーダビリティの文学。スペイン版『二流小説家』←褒めてます。綺麗なねーちゃんが活躍する…

『プロフェッショナル』 ロバート・B・パーカー 早川ミステリ文庫

スペンサーシリーズ37作目。本書のベストセリフ「マサチューセッツ州はゲイ問題に関しては昔から寛容だった」 「彼女を大切に思ってる。私たちはすべてを共有する、セックス以外。これからの生涯、ずっと彼女といたい」ホモの男性とヘテロの女性の夫婦愛に感…

『ミステリアス・ショーケース』 デイヴィッド・ゴードン他 早川ポケミス

2011年に人気大爆発した現代アメリカミステリ作家達の最新作を集めた豪勢なアンソロジー。純文学寄りのノワールからエンタメに回帰しつつある最新事情に触れ感動して下さい。エンタメの妄想力の凄さに驚愕しろ!本格推理と言うよりは純文学寄りでトリックの…

『解錠師』 スティーヴ・ハミルトン 早川ポケミス

本書のベストセリフ「美術学校へ行くとどうなるか知っているか? きみには生まれながらのすばらしい技法がある。精巧な描写力がね。やつらはそれを叩きつぶす。きみの力に圧倒されるあまり、キャンバスに絵の具を猿みたいに投げつけろと命じるんだ。卒業する…

『奇跡の巡洋艦』 ダグラス・リーマン 早川文庫NV

本書のベストセリフ「女性には選択する権利がなければなりません。人が子供をつくるのには、ドイツ国家のために兵隊と母親をつくりだすということよりももっとましな理由があるはずです」戦争小説なのにジェンダー観が素晴しい異色の作品。そして、イギリス…

『推定無罪』 スコット・トゥロー 文春文庫

裁判が始まる前の200Pはミステリというよりも、人物を丹念に描く純文学。 主人公の息子の少年野球の試合の模様がミステリとしての伏線になるとは思えないが?序盤は退屈で寝てしまうが、裁判が始まったら面白くなりすぐ読了。すぐ下巻へ。下巻は一気読み。…

『灰色の嵐』 ロバート・B・パーカー 早川ミステリ文庫

スペンサーシリーズ36作目。本書のベストセリフ「彼は若すぎた。ヒロイズムが要求され、かつヒーローが殺されない映画を観すぎている」マスゴミ批判、若者揶揄、素晴しいジェンダー観と3拍子揃った安定したいつものスペンサーシリーズ。章立てが多く会話ばか…

『エージェント6』 トム・ロブ・スミス 新潮文庫

世界征服を企む悪のナチスドイツの首都ベルリンに突入し、世界史1の悪ヒトラーを自殺に追い込んだソ連軍は正義の組織である。ソ連は社会主義という人類の理想を顕現した地上の楽園である。世界征服を企む悪の資本主義帝国国家アメリカの差別される黒人がソ連…

『黄昏に眠る秋』 ヨハン・テオリン 早川ポケミス

序盤は本格推理ではなくて歴史文学ぽい。 1970年代の5歳の少年の失踪事件が語られ、 1990年代の少年の母の苦悩が語られ、 1930年代の容疑者の人生の語りが始まる。父を名前で呼び捨てにする主人公のキャラはいいが、主人公は幽霊信じてるので脱力して挫折し…

『ディーン牧師の事件簿』 ハル・ホワイト 創元推理文庫

「プロローグ」 「足跡のない連続殺人」 「四階から消えた狙撃者」 「不吉なカリブ海クルーズ」 「聖餐式の予告殺人」 「血の気の多い密室」 「ガレージ密室の謎」21世紀に甦った黄金本格推理とマンセーするべきだが、本格推理としては無駄な人間描写が私…

『二流小説家』 デイヴィッド・ゴードン 早川ポケミス

21世紀の新世代作家として、ジェンダー観が素晴しい。 主人公の中年作家探偵が2回も女装する素晴しさ! 作家が主人公という事で、小説論や芸術論も語られるが、共感出来る良い論旨であった。 序盤テンポが遅いが、終盤のドンデン返しの嵐は見事。 最後のペー…

『キール港の白い大砲』 ダグラス・リーマン ハヤカワ文庫NV

本書のベストセリフ「おれに必要なのは犬だけだ」 「女は?」 「ああ、たぶんいつかは」口とペニスしかない野蛮な男が大好きなセクス=愛を揶揄し、犬に象徴される友情、遊び心をマンセーした戦争文学。ナチドイツ降伏で物語りは始まるので戦争冒険小説ではあ…

『ジーヴズの事件簿―大胆不敵の巻』 P.G.ウッドハウス 文春文庫

恋愛ネタのドタバタコメディが多いこのシリーズだが、今巻は禁断の宗教ネタやっていて大満足。牧師の長説教を賭けの対象にした競馬ミステリパロディの最初の話に拍手喝采した。お馬鹿な愛すべきイギリス貴族のご主人様のギャンブルに策を授けるスーパー執事…

『神の足跡』 グレッグ・アイルズ 講談社文庫

本書のベストセリフ超コンピュータ「誰がふさわしい男なのか?」 神の代弁者「なぜ男だと考える?」 超コンピュータ「では、女だと?」 神の代弁者「そうは言ってない」人工知能テーマのSFと思わせて、哲学SF、ジェンダーSFにも発展!?量子コンピュー…

『グラーグ57』 トム・ロブ スミス 新潮文庫

本書のベストセリフ「なんでも好きなことをさせて、喜ぶようなことを言っていれば、子供には気に入られる。それは簡単なことよ。機関銃を渡して、おまえは革命の子だと思わせる。魅惑的な嘘よ。でも、そんなことであの子があなたを愛するようになるとは思え…

『静かなる天使の叫び』 R・J・エロリー 集英社文庫

リーダビリティは良いが、1940年代が舞台なので仕方ないとは思うが、ジェンダー観が古臭い。女は守られるのみで、男が女を守らないとアカンのだそうです。

『川は静かに流れ』 ジョン・ハート 早川ミステリ文庫

文学寄りだが、一応意外な真犯人ということで及第点は付けられる。もうちょっとテンポが速いと更に良かった。年間ベスト1クラスではないだろうw原発問題を含む社会派なのは良いが、ジェンダー観がやや古いのはマイナス。苦悩する金持ち青年の物語としては、…

『二壜の調味料』 ロード・ダンセイニ 早川ポケミス

ダンセイニだからもっとファンタシィ系ホラー系の話があるかと期待したが、ほとんどが真っ当なミステリで期待外れでした。トリックのネタが古過ぎて脱力します。

『煙で描いた肖像画』  ビル・S・バリンジャー 創元推理文庫

題名どうりの物理トリック(J・G・バラードの「コーラルDの雲の彫刻師」のような)が出るかと思ったが違ったw。題名は比喩表現です。というわけで、本格推理ではなくて、サスペンス寄りの文学である。

『20世紀の幽霊たち』 ジョー・ヒル 小学館文庫

17作全てギリギリ水準作以上だが、女性視点の物語が一つしかなくて、21世紀に書かれた話にしては、ジェンダー観が古すぎて笑う。いまだに父性愛をマンセーされてもなぁ。上手な無駄の無い話ばかりだが、もう、お腹いっぱい。作者の引き出しの限界も読み取れ…

『ホット・ロック』 ドナルド・E・ウエストレイク 角川文庫

泥棒ドートマンダーシリーズ第一作。長編と言うより中篇連作な感じ?メカを駆使した派手な面白い作戦もあるが、ラストが地味でちょっとご都合主義に思う。作者とユーモアのセンスが合う人には至高の作品だろう。

『超音速漂流』 ネルソン・デミル&トマス・ブロック 文春文庫

SFの名作「冷たい方程式」に匹敵する冷徹な悲劇性が素晴しい!物理法則に逆らう筋力を持たない赤ん坊や子供が最初に死んでいくのが素晴しい!本来なら救助する者が敵になるのも凄いサスペンス!

『砂漠のテロリスト』 ボブ・ラングレー 創元推理文庫

ラスト100Pは素晴しいが、そこに至るまでがクソツマラン諜報小説。小説って言うか、出来の悪いハリウッド映画の台本のレベル。ラスト100Pのアクションや人間関係の描写が無ければ、ラングレーはポイ出来るのだが、見捨てるにはやはり惜しい作家ではある。前…

『緑は危険』 クリスチアナ・ブランド 早川ミステリ文庫

ナチスドイツに空爆されているロンドン。民間警防団として救助活動に勤しむ年老いた郵便配達夫は、崩落した家屋の下敷きになり、大腿部骨折で陸軍病院に担ぎ込まれた。負傷者が大量に運び込まれている為、足だけの怪我の彼の手術は翌日に持ち越されたが、命…

『少年時代』 ロバート・R・マキャモン 文春文庫

ホラーというよりファンタジィというか、マジックリアリズム寄りの児童文学。1964年のアメリカの田舎町の一年が描かれます。

『チャイルド44』 トム・ロブ・スミス 新潮文庫

従順な愛らしい妻から脱皮してヒロイズムに酔う夫を突き放す、対等のパートナーになる妻との関係がいい!ジェンダー観も素晴しい大傑作!

『千尋の闇』 ロバート・ゴダード 創元推理文庫

本格推理というより、歴史小説というか、文学。ワクワク感ドキドキ感が少なすぎてダメポ。最初の250Pは25Pに刈り込んで欲しかった。一人称の中に他人の手記が挟まれる構成だが、入れ子構造は単純な二重である。三重みたいにカバーには書かれているが、二重が…

『夜の片隅で』 ジョン・モーガン・ウィルスン 早川ミステリ文庫

ゲイの新聞記者を主人公にしたハードボイルドというか、ゲイ文学。ゲイ・レズ・黒人・ヒスパニック・韓国人・身体障害者等のマイノリティがワサワサと出てくるのはさすがだが、本格推理としては真犯人がモロバレでダメポ。

『風雲の出帆―海の覇者トマス・キッド〈1〉』 ジュリアン・ストックウィン 早川文庫NV

『男は旗』 を掲げ、大海原に旅立つべきざんす。というわけで、18世紀の帆船に乗りたい人はこれを読め。『秋の星々の都 [永遠の戦士フォン・ベック②]』 と同じ時代である。メジャーな事件で言えばバウンティ号の叛乱から四年後が舞台。