『ディーン牧師の事件簿』 ハル・ホワイト 創元推理文庫

「プロローグ」
「足跡のない連続殺人」
「四階から消えた狙撃者」
「不吉なカリブ海クルーズ」
聖餐式の予告殺人」
「血の気の多い密室」
「ガレージ密室の謎」

21世紀に甦った黄金本格推理とマンセーするべきだが、本格推理としては無駄な人間描写が私には瑕疵に感じる。
主人公が引退牧師なので神学の話題がうっとおしい。被害者が殺される直前に主人公と宗教問答したエピソードでは、被害者は回心した後で殺されたので天国に行けて良かったざんすという視点は、主人公とともに天国で再会出来る事を喜ばせようとするみたいで、本格推理の感動では無い。

主人公は自分の推理力を自慢せずに、神がヒントを与えてくれたと言うのだが、
そのヒントは母と娘の何気ない日常シーンだったり、
少年たちの野球のシーンだったりして、
神が答えを教えてくれる戦慄に頭がおかしくなりホームレスにまでなってしまう、
山田正紀の神性探偵シリーズに比べると、考察が甘い。

この作品では神の存在証明として自由意志論を使用しているが、
自由意志を使用しない決定論でも世界は説明出来る。

本格推理として論理的な雰囲気を出そうとしているが、
とんでもない論理の飛躍があり、
神を必要としない決定論者には本書は大笑いである。

ディーン牧師の事件簿 (創元推理文庫)

ディーン牧師の事件簿 (創元推理文庫)