『攻旗だ、無頼船よ』 西村寿行

単なる海洋アクションだと思っていたが、優れた冒険推理であり、
素晴らしい反戦小説である。
戦争の悲惨さ、国家の為に死ぬことの馬鹿馬鹿しさ、脱走兵の素晴らしさ、
男のいやったらしさ、人種や文化の違いはあっても人間はすべて平等であり、
命は尊いものだという事を力強く訴えたのが本書である。
無頼船と異名をとる「孤北丸」は世界損害保険連盟極東地区調査団(FERT)の依頼により
再び、保険金詐欺団(ペーパーパイレーツ)退治に出航する事になった。
目的地はニューギニア!
だが、任務以外に次々と飛び込んでくるトラブル!
幻の碧真珠に関する殺人事件、
人身売買組織によるクルーのヤンキー娘の誘拐、
ニューギニア現住部族に妻を強殺され復讐に燃える日本人商社マン、
寄港するたびにトラブルと謎をしょいこんだ
「孤北丸」がニューギニアの奥地に見つけた真実とはなんだったのか?
あなたもこの小説を読んで、世界平和の為に、女性を男から解放する為に、
幸福な文化生活を広める為に、発奮して下さい。
本書を読んだ後でも平然とセクースする奴は人間じゃねえ、けだものである。
いいかげんに女性をセクースから解放してやらんかい!
ま、ご都合主義はいっぱいあったが、
ラストで見事に反戦小説としてストーリーが収斂していったのは凄い!
それにしても本書に登場した脱走兵はなんて魅力的なんだ!
これぞ男の中の男である!
脱走兵のどこが悪い!(おしんか貴様!)