『下町探偵局〈PART2〉』 半村良

本書は東京の両国(半村良の生まれ育った所だ)で探偵局を開業した
下町(シモマチ)誠一と、彼の部下たちがあやなす人情劇である。
フィリップ・マーロウリュウ・アッチャー、サム・スペード等にあこがれてみても、
彼らはあまりにも遠い存在であり、
安楽椅子もあるのだが、アームチェアデテクティブにもなれない。
下町探偵局の仕事は他の探偵社から回される下請けがほとんどなのだ。
浮気の素行調査がすべてである。
局長を含めたメンバーは全員社会の負け犬であり、心に傷を持つ貧乏人である。
本書はしみじみと浸る小説である。
スカッとするものではない。
内閣を潰せるような証拠写真を偶然撮影してしまった下町探偵局は、
一流探偵社に一千万円を目の前に積まれると、あっさり売ってしまうのである。
なんと情けない探偵だ!
と怒る方は半村良を読む必要はない。
日本の探偵にヒーロー性を期待する方がおかしいですよ。
タフガイのハードボイルドは海外だけで十分ですよ。
探偵さんと美少女の恋愛物語だと?笑っちゃうね。
そんなものはジュブナイルですな。
本書の探偵は中年のおっさんとおばはんばかりである。
相撲、プロレス、キックと流れて下町探偵局に入った結城元太郎(弥勒戦争か貴様!)も
しょせんたいして必要なくプロレスに戻ってしまうのも半村良の世界では当り前のことである。
暴力は粋じゃないよ、うん。

下町探偵局〈PART2〉 (ハルキ文庫)

下町探偵局〈PART2〉 (ハルキ文庫)