『冬の子供たち』 マイクル・コニイ サンリオ

WINTER'S CHILDREN

コニイ作品でこれが一番異色作であろう。これのみが三人称で書かれており、

コニイが好む青春恋愛ストーリーの香りがないのだ。

本書をコニイのベスト1に押す人もいるぐらいの、

色々と騒がれたあの結末。
ようするに主人公一人のキャラを重視せずに、

物語を作る上で必要最小限のキャラを設定し、

すべてのキャラを深く描写して、

作者の思想や御都合主義を排して、

冷静に論理的にキャラを動かせば、

こんな意外な結末になってしまったというわけだ。

他作品では読み間違える可能性のあるコニイの長所がもっとも読み取れる作品である。

コニイは自作のキャラに少しも感情移入しないのだ。

どんなに甘く感傷的な作品に思えても、

そういうキャラを冷静に設定して動かしているのがコニイの作品なのだ。

すべての作品にヨットが登場するのには深い意味があるのだろう。

たぶんコニイは人間の女よりも船の方が好きなのだ。

第五氷河期となった地球に生きている人々を描いた本書ですら、雪上ヨットを出してしまった。

船フェチであり、ストーリーのためにキャラがあるのではなく、

キャラがあるからストーリーが生まれると思っている人の為に、コニイのSFは存在しているのだ。

冬の子供たち (1980年) (サンリオSF文庫)

冬の子供たち (1980年) (サンリオSF文庫)