『はだかの太陽』 アイザック・アシモフ 

THE NAKED SUN

ヒエラルキーの頂点の二万人が人間で、それ以外の労働者はすべてロボットという惑星ソラリアで、

植民以来初めての殺人事件が発生した。

ドームに覆われた鋼鉄都市に住む地球人は広所恐怖症になったが、

ソラリア人は対人恐怖症になっていた。

ソラリア人二万人は全てが領主であり、

どこまでが自分の土地かも判らないような広大な地所に住む彼らは、

他人をヴュースクリーン以外で見ることは少なくなり、

やがて、直接視認に生理的嫌悪を感じるようになっていた。

被害者は撲殺されており、たとえどんな動機があろうとも、

ソラリア人が他人を見るという恐怖を乗り越えてまで殺人をするわけがない!

状況は密室であり、そこには故障したロボットが一台佇んでいた。

しかも凶器は遺留品として存在してなかった。

考えられることはただひとつ、

ロボットが犯人である。

だがロボットに殺人なぞ出来る訳がない!

ロボット工学の第一条

「ロボットは人間に危害を加えてはならない。

またその危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない」

は、ロボットのポジトロン脳の中枢に組み込まれており、

人間を助けることが出来なかった場合でさえ、ロボットは機能不全に陥ってしまうのである!
ソラリア政府は、「鋼鉄都市」の難事件を見事に解決した名刑事、

ニューヨーク市警C6級私服刑事イライジャ・ベイリを呼んで捜査させることにした。

かくしてドームに覆われた鋼鉄都市を飛び出し、

はだかの太陽を視認できる恐るべき惑星ソラリアへ、

ベイリは旅立つ破目になった。ヨシヤバテ!(なんてこった!)

本格SFミステリだから、へたなことを書くと読む楽しみがなくなる。

これだけは言っても良いかな?

第一条には自明の理だから明文化されていない恐るべき盲点があったのだ!

なんてね。ほんとはたいしたことじゃない。

巧く書けば「Yの悲劇」になった可能性もあったのに、

アシモフ先生、少し手を抜いたという感じである。

イライジャが完全に主人公で、相棒のロボット刑事ダニール・オリヴォーの存在感が薄すぎる。

しかし、ラストのダニールのセリフをどう深読みするかが問題である。

まさかオリヴォーが××で××しないよねぇ?

はだかの太陽 (ハヤカワ文庫 SF 558)

はだかの太陽 (ハヤカワ文庫 SF 558)