『千里伝 時輪の轍』 仁木英之 講談社

千里伝 時輪の轍

千里伝 時輪の轍

本書のベストセリフ

「ぼくは嘘はつくが約束は破らない」

なんちゅう歪んだヒーローだw

さすがパラダイムシフトの天才仁木英之である!

今回『朱温』のキャラの楊行密が出て来るので、

シリーズ最終巻は大甲子園化しそうでデラ楽しみですな。

唐代から百年以上離れたキャラも集結可能な伏線引いた超絶ファンタジーの二巻である。

遍在と偏在を間違えている気がするが、読者には正しく伝わると思うのでまっいいか。

『前哨』 アーサー・C・クラーク  浅倉 久志 他訳 ハヤカワ文庫SF

前哨 (ハヤカワ文庫 SF (607))

前哨 (ハヤカワ文庫 SF (607))

・第二の夜明け

・おお地球よ

・破断の限界

・歴史のひとこま

・優越性

・永劫のさすらい

・かくれんぼ

・地球への遠征

・抜け穴

・遺伝

・前哨

全体的にSFミステリが多く、楽しく読める。

「破断の限界」は必読である。方程式ものである。

「私は死ぬようなことはしてないわ!死ぬようなことはちっとも!」

と泣いたパープーアーパールンルンギャルが登場する元祖とよく比べてみるのも一興である。

で、それがどうしたっていうんねん!

と怒鳴りたくなるバカバカしい話(そもそも話にもなんにもなっちゃいない駄文)もあるが、

珍しくも戦闘シーンのある話もあるし、

短編集としては買っても損はないだろう。

もちろん「太陽からの風」には負けるけどね。

『冷たい方程式』 トム・ゴドウィン他  浅倉久志他 訳 早川文庫SF

接触汚染」キャサリン・マクレイン

「大いなる祖先」F.L.ウォーレス

「過去へ来た男」ポール・アンダースン

「祈り」アルフレッド・ベスター

「操作規則」ロバート・シェクリイ

「冷たい方程式」トム・ゴドウィン

「信念」アイザック・アシモフ


の七作が収録されているが、最高傑作は、

泣きSFのオールタイムベストの座を「アルジャーノン」と長い間争った

「冷たい方程式」で決まりであろう。

「アルジャーノン」との戦いは、キイスがメジャーになって負けたが、

長編版が無いゆえに、泣きSFの最高短編は、「冷たい方程式」であるというのが、不動になった。

NHKでラジオドラマ化されたが、任務終了後、パイロットが狂ってしまうのは、

余分な演出だと思った。

大勢の命を救うために一人の美少女をぶち殺すのは、

社会的人間として当然のことである。

そんなことで狂う繊細な神経持っていたら、

恥を知らない政治業者とマスゴミが支配する社会では生きていけませんよw

少女が無知だったのも悲劇の原因、

普通の人は泣くが、美少女より知識を愛する男は拍手喝采してしまう

素晴しい泣きSFである。

どうでもいいが、アシモフの「信念」は同じネタを小悪魔アザゼルシリーズでやっている。

主人公は物理学者ではなくて一般人になってるがねw

『小悪魔アザゼル18の物語』 アシモフ  小梨 直 訳  新潮文庫

小悪魔アザゼル18の物語 (新潮文庫)

小悪魔アザゼル18の物語 (新潮文庫)

「身長二センチの悪魔」

「一夜の歌声」

「ケヴィンの笑顔」

「強い者勝ち」

「謎の地響き」

「人類を救う男」

「主義の問題」

「酒は諸悪のもと」

「時は金なり」

「雪の中を」

「理の当然」

「旅の速さは世界一」

「見る人が見れば」

天と地と

「心のありよう」

「青春時代」

「ガラテア」

「空想飛行」


人の良い(悪魔の良い?)悪魔を騙して、願い事をかなえようとするのだが、

いつも裏目に出て、願い事をした人が不幸になるユーモア小噺集。

一番不幸なキャラは科学オタクでありながら、超科学の成果を宗教家に目撃されてしまい、

奇跡を顕正したと、聖人扱いされ、その宗教団体に付きまとわれ、

奇跡ではない、科学であると、何度説明しても理解されず、

(物事を理解する能力がない奴が宗教に騙されるのだから当然か・・・)

馬鹿の相手を真面目にするよりは、自分も馬鹿になったほうが楽だと、

科学を捨てて、宗教組織の一員になってしまった、

「空想飛行」のタクシーの運ちゃんであろう。

合掌、アーメン、アッラーアクバル、エコエコアザラク

アニマニマネママネシレシャリテ、怨敵退散!伊庭様勝利!

(ギャグを捻りすぎたか?)

『渇きの海』 アーサー・C・クラーク  深町 眞理子訳 早川文庫SF

月面の砂の海に沈没した観光船を救助するハードSF。

SFというと映画的な派手な宇宙戦闘を想起する諸兄もいようが、

こんな地味で固いものもあるw。

救助SFというサブジャンルが確立しなかったのは残念。

クラークなら、水星のトワイライトゾーンの秤動で焼き尽くされる観光船とか、

金星の二酸化炭素の底で溶解する観光船とか、

火星のオリュンポス山の火口に落下して一万メートルを墜落する観光船とか、

木星のメタンの海で腐食する観光船とか、

土星のリングに衝突する観光船とか、

天王星コリオリの力に振り回されて分解する観光船とか、

海王星で凍える観光船とか、いろいろ書けたと思う。

人間が知恵と科学技術のみで他の人間を救う救助SFはもっと書かれていいと思う。

ラストで宇宙人が助けに来ると白けますよね?

宇宙人も神も助けには来ません。

人間を救うのは科学技術のみですw

『太陽からの風』 アーサー・C・クラーク  山高 昭・他 訳  ハヤカワ文庫SF

・神々の糧
・大渦巻?
・輝くもの
・太陽からの風
・秘密
・最後の命令
・Fはフランケンシュタインの番号
・再会
・記録再生
・暗黒の光
・史上最長のSF
・ハーバート・ジョージ・モーリー・ロバーツ・ウエルズ殿
・あの宇宙を愛せ
・十字軍
・無慈悲な空
中性子星
・地球の太陽面通過
メデューサとの出会い

これがSFだ!これこそSFの短編集である。

本書を読んで感動しない人はSFファンではありません。

SF小説にも含まれる”何か”のファンなのでしょう。

本書はSFのエッセンスだけで構成された本である。

小説になってないものもある。

キャラクターが何の行動も起さず、どういう人物なのかを提示する心理描写もなく、

ただひたすら、科学的SF的なものについて討論するだけの話を、

小説とか物語とか呼ぶわけにはいかないだろう。

が、それでもSFとしては感動するのである。

SFの欠点が曝け出されている故に、真のSFファンしか感動できない短編集である。

ドグツニッコウが絶賛したという表題作は、

ダンバインのチャム・ファウ役の声優の川村ナントカも感動したという

ブラッドベリ的な作品であり騒ぐほどのもんじゃない。

この中で最高傑作は「輝くもの」である。

クレアのイルカSFが如何にバカバカしいかよく判る作品である。

NO2はただ木星探査をするだけの話の「メデューサとの出会い」でしょうな。

メデューサみたいな外見の生命体がいただけで、

神話のメデューサが出てきてたまるかくぬやろ!

クラークからSFマインドを取ったら何も残らないことがよく判る本書は、

クラークだけにとどまらず、SF短編集としては世界最高の本であろう。

『遥かなる地球の歌』 アーサー・C・クラーク  山高 昭 訳  ハヤカワ文庫SF

同名の短編を現代的に長編化した、

クラーク版「断絶への航海」である。

ワープ航法などというテレポートと同じようなふざけた超常現象は、

第二次大戦パロディアニメ「宇宙戦艦ヤマト」には似合っても、

まともなSFは使ってはいけないのである。

本書は1985年の科学技術で可能と思われる恒星移民テーマのハードSFである。

ひとつだけ実機は作動してない理論段階のアイデアもあるが、

ワープやらエネルギー充填120%に比べればまともである。

クラークの欠点である人類を見守る未知の存在も、

ハードを追求するなら出すわけにいかず、

太陽系最後の日を迎えるが宇宙人は助けに来ず、

人類は独力でワープエンジンもなしに恒星間へ旅立つのである。

オーバーロード、オーバーマインド、スターチャイルドというフザケタ存在が出てこない、

クラークの良い所だけを集大成した傑作である。

ベスト1と言いたいが、地味すぎるのでベスト2ですね。

『太陽系最後の日』 アーサー・C・クラーク 浅倉久志 他訳 早川文庫SF

「太陽系最後の日」
「地中の火」     
「歴史のひとこま」 
「コマーレのライオン」
「かくれんぼ」     
「破断の限界」     
守護天使」      
「時の矢」       
「海にいたる道」   
「貴機は着陸降下進路に乗っている−と思う」

女登場率0.01以下!

男女のラブラブファイヤーも

男の面子も軍の権威も

人類の存在意義も超克した、

宇宙と物理法則に萌える珠玉の中短編集!

幼年期の終り」の原型の「守護天使」が

無意味な哲学視点を排した

SFミステリに純化されていてお値打ち。

長編版よりこっちの方が良い。

トム・ゴドウィン より先に「冷たい方程式」 を、

銀河ヒッチハイク・ガイド』 より先に不確定性航法をやっていた

アーサー・C・クラーク の天才性を再発見!!

『銀河ヒッチハイク・ガイド』 ダグラス・アダムス 河出文庫

銀河ヒッチハイク・ガイド (河出文庫)

銀河ヒッチハイク・ガイド (河出文庫)

銀河ヒッチハイク・ガイド [Blu-ray]

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海外ユーモアSFならハリィ・ハリスン読んでいれば充分だろと、

馬鹿にして読んでなかったが、アーサー・C・クラーク

ミチオ・カク もけっこう好意的に本書を紹介してたので、

意外とハードなのかと読んでみた。

数字データの間違いが多すぎてハードSFとしては読めないが、

ユーモアSFとしてはハリィ・ハリスンより本格SFに近くて楽しめました。

哲学者も笑いのめしているのが痛快!

神の非存在証明は笑えるがとても参考になります。

何故生きるのかという疑問に見事な答えを提示した

本物の哲学SFとしても読めます。

何故?と問うから答えが見つからないですらー。

どこで?と思索することが大事ざんす。

『90億の神の御名』 アーサー・C・クラーク 浅倉久志 他訳 早川文庫SF

「前哨」

「月面の休暇」

「おお地球よ…」

「時間がいっぱい」

「90億の神の御名」

木星第五衛星」

「夜明けの出会い」

「海底牧場」

「密航者」

「星」

「月に賭ける」

「究極の旋律」

「天の向こう側」

「遙かなる地球の歌」

「幽霊宇宙服」

ベツレヘムの星」


本邦初訳は「月面の休暇」だけなので、

50Pちょい読むだけで500P読んだ事になる効率の良い短編集(本末転倒w)。

実は「月面の休暇」は月で生命が発見されるという50年古い作品なので、

読む必要は無いw。

クラークを全然読んでない人はもちろん必読である。

『メデューサとの出会い』 アーサー・C・クラーク 早川文庫SF

イカルスの夏」
「彗星の核へ」
土星は昇る」
「未踏のエデン」
「憎悪」
「ドッグ・スター」
「メイルシュトレームII」
「きらめく生きもの」
「秘密」
「太陽からの風」
「神々の糧」
「無慈悲な空」
「地球太陽面通過」
メデューサとの出会い」

短編なんて読んだら内容どころか、

タイトルも忘れてしまう私だが、

目次に並んでいるこのタイトル群には、

感動が戦慄とともに甦ってきましたぞ。

初訳短編はないので買わなくて良いと言いたいところだが、

オマケの四編のエッセイに初訳があり、買うべし!

クラークの素晴しい科学観宗教観に打ち震えよ!

ゲーデルの神の非存在証明の話もありまっせ!