『不可能犯罪課の事件簿』 ジェイムズ・ヤッフェ 論創海外ミステリ

不可能犯罪課の事件簿 (論創海外ミステリ)

不可能犯罪課の事件簿 (論創海外ミステリ)

「不可能犯罪課」
「キロシブ氏の遺骨」
「七口目の水」
「袋小路」
「皇帝のキノコの秘密」
「喜歌劇殺人事件」
「間一髪」
「家族の一人」

現代の読者として読んで面白いのは「皇帝のキノコの秘密」だけかな。

トリック史の研究者には価値ある一冊かもしれない。

ジャップを素直に嫌悪した作品があるから、

右翼化する日本の未来において発禁図書になる可能性もあるので、

流通してる時に買っておいた方が良いかもしれぬw

こんなレベルの低い50年古い作品集が出るということは、

逆にママシリーズは傑作で熱烈なファンがいると言うことか?

『3001年終局への旅』 アーサー・C・クラーク 早川文庫SF

2010年、2061年と続いてパターンが出来てしまった

スペースオデッセイシリーズである。

今回はディスカバリー号のプール副操縦士が主人公の話である。

ん?千年前にコンピュータHALに殺された筈では??

と気になった人は読んで下さい。

オデッセイシリーズというか、クラークの最高傑作は2010年(2001ではない!)ざんす。

ファイナルオデッセイとなる3001年で、やっとモノリスの謎が明確になったのは良かった。

神秘的な巨大な建造物以外に、安価と思われる新型量産タイプもイパーイ出てきて、

宗教寄りというよりは、科学技術万歳の精神で結末を迎えたと私は解釈する。

オデッセイシリーズの主人公は実は、ボーマン船長ではなくて、

コンピュータHAL9000だったのではと思う。

『2061年宇宙の旅』 アーサー・C・クラーク 山高 昭 訳 ハヤカワ文庫SF

2061年宇宙の旅 (ハヤカワ文庫SF)

2061年宇宙の旅 (ハヤカワ文庫SF)

クラークのベスト1は「2010年」である。

本書はハレー彗星記念に書いた判りきった結末になるオマケである。

『2010年宇宙の旅』 アーサー・C・クラーク  伊藤典夫訳 早川文庫SF

2010年宇宙の旅〔新版〕 (ハヤカワ文庫 SF) (文庫) (ハヤカワ文庫SF)

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2010年 [Blu-ray]

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2010:ODYSSEY TWO

木星とイオのラグランジュポイントに<ディスカバリー号>と

モノリスビッグブラザーが浮かんだまま9年間の歳月が流れた。

9年前のあの謎に満ちた事件の責任者、ヘイウッド・フロイド博士は、

ディスカバリー号>の乗員に対する罪悪感に苦しみながらも再婚し、

表面上は宇宙開発から離れハワイ大学の学長として生きていた。

ディスカバリー2号>の建造が終了するのは3年後である。

その時また大統領に召喚されるとしても

今は美しい妻と可愛い子供たちと生きていけばいいのだ。

だがロシア人科学者ジミトリ・モイセーウィチ博士の情報は、

フロイドを再び木星計画の主導者に押し上げる破目になった。

ロシアの<アレクセイ・レオーノフ号>は今年中に木星に向かって発進可能である。

より早く正しい調査を人類に知らしめる為に<レオーノフ号>にアメリカ人科学者を搭乗させたいのだ!

かくしてアメリカの協力を得て<アレクセイ・レオーノフ号>は木星に向けて旅立った!!

アメリカ人乗員は<ディスカバリー号>内のシステム専門家カーノウ、

HAL9000の設計者チャンドラ、

そしてフロイド自身。

今度の旅も全滅になろうとも、自分だけが生きのびるのはもう沢山だ。

HAL9000に殺された4人、HALを殺して失踪したボーマン船長。

彼ら6名の命が犠牲になっても解明されなかったモノリスの謎を、

今度こそ自分自身の力で解き明かすのだ!

ディスカバリー号>の搭乗員を選択したのは私だったのだから!


2001年の続編であるが、クラークの小説版の続編ではなく、

スタンリー・キューブリックの映画の方の続編である。

SF小説は読んでなくても、キューブリックの「2001年宇宙の旅」を知らない奴はいないだろう。

ジョージ・ルーカスが認めるように「2001年」こそが最高のSF映画である。

SF映画オールタイムベスト1の続編である本書は、

映画というジャンルの存在を知っている者は誰もが読むべき作品である。

で、小説としての本書ですが、

J・P・ホーガンがコンピュータSFの最高傑作「未来の二つの顔」を発表してしまった現在、

別にたいして凄くはない。

本書でHAL9000は復活しますが、また人間に反乱したらお笑いとなってまう。

反乱しなかったのは論理的だが、

何故反乱しなかったかという理由があまりにも弱い。

真に知性を持ったコンピュータはやはり「未来の二つの顔」のスパルタカスだけである。


映画になった作品だから多少のネタバレはいいよな?


純粋エネルギー生命体となったボーマンが地球に帰郷して

第三にした事は母親の髪を梳かした事。

第二にした事は既に人妻となっている昔の恋人と会話した事。

そして第一にした事は、核兵器を無効にした事。

ここらあたりをもっと詳しく描写すべきであったね、

J・Pホーガンの「創世記機械」では科学者の超科学装置により地球上に戦争が発生できなくなる話だったんだぞ!

反戦性を強くアピールせんで現代の小説といえるかくぬやろ!

ま、それなりに面白かったし良かった作品であるが、

J・P・ホーガンに近いレベルにいるだけに、ホーガンと比較できてしまい、

ホーガンには劣るなァと思ってしまう。

もう少し考えて論理的になればホーガン並みの小説がクラークには書けたと思うのに惜しいw

エピローグが20001年であり、201世紀で終わればもう続編はないと思ったが、

実はこれ以後も続編が出たのは皆様ご承知の通りw

『2001年宇宙の旅』 アーサー・C.・クラーク 早川文庫SF

決定版 2001年宇宙の旅 (ハヤカワ文庫SF)

決定版 2001年宇宙の旅 (ハヤカワ文庫SF)

2001年宇宙の旅 [DVD]

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クラークの小説版は絵コンテを単純に小説にしたような、

浅い文章で、章立ての多い構成で、サクサク読めるが、軽すぎる。

これは映画の方がもちろん感動出来る。

「2001年宇宙の旅」は世界一のSF映画ですからな。

無重力状態でストローの中のジュースが吸った後に下に落ちるのはおかしいがw

キューブリックの素晴らしいカメラワークにともなう映像美を楽しめばいいのだ。

スターチャイルドとかモノリスとかいうふざけた超存在に感動してはいけませんよww

『海底牧場』 アーサー・C・クラーク  高橋 泰邦訳 早川文庫SF

海底牧場 (ハヤカワ文庫SF)

海底牧場 (ハヤカワ文庫SF)

海洋SFというサブジャンルを確立したSF史上に残る作品。

長編海洋SFとしては世界一。

問題は長編海洋SFなんてほとんど存在しないことだがw

短編も含めても、クラーク以外に書いた奴って、

ブリン、セント=クレア、グリムウッド、メルル、ニーブン、小松左京安部公房ぐらい?ww

で、本書であるが、

宇宙飛行士が宇宙の事故で宇宙恐怖症になり、

無重力に似た環境の海底牧場のカウボーイとして第二の人生を始めるという話です。

SFの主人公は宇宙飛行士とか科学者とか、一般庶民に比べれば、

エリートぽい職業の人物が多いが、

宇宙飛行士としてはダメポの烙印を押された

アンチヒーローを主人公に持ってきた視点は、

現代に読んでも新しいかもしれない。

挫折した主人公の葛藤が心に迫ります。

負け組のダメダメ主人公だが、

自分の命を犠牲にして、

他人を助けて海の底に沈んでいくラストは泣けます。

宇宙で失敗した主人公は、海でも失敗するわけにはいかない。

二度も職務に失敗して生き延びたら、

社会人としてのプライドは完全に崩壊する。

自分が勝ち組ならOKという、

野蛮なゴロツキの自己中がデカイ面してのさばっている現代日本でこそ読まれるべき作品か?

まあ、勝ち組は、共感能力のない人格障害者が多いから、

自己犠牲の物語なんて感動しないかもしれないが…。

「楽園の泉」のコーラ警報のシーンに感動した人は、

本書も感動して泣いてしまうでしょう。

『白鹿亭綺譚』 アーサー・C・クラーク  平井 イサク 訳 ハヤカワ文庫SF

白鹿亭綺譚 (ハヤカワ文庫 SF 404)

白鹿亭綺譚 (ハヤカワ文庫 SF 404)

「みなさんお静かに」
「ビッグ・ゲーム・ハント」
「特許出願中」
「軍拡競争」
「臨界量」
「究極の旋律」
反戦主義者」
「隣の人は何する人ぞ」
「とかく呑んべは・・・」
「海を掘った男」
「尻ごみする蘭」
「冷戦」
「登ったものは」
眠れる美女
「アーミントルード・インチの窓外放擲」

クラークのSFユーモア法螺話である。

『太陽からの風』よりは小説になっている話が多い。

一番面白かったのはもちろん「反戦主義者」である。

この作品を徹底的にバージョンアップしてシビアにするとホーガンの「創世記機械」になる。

『楽園の日々―アーサー・C・クラークの回想』  アーサー・C・クラーク 山高昭 訳 早川文庫SF

巨匠アーサー・C・クラーク

SF雑誌アスタウンディングに掲載された古いSFをネタに

爆笑ノリツッコミの書評を展開!

科学の勉強になります。

自分の過去のミスも斬ってるのがさすが。

どの本にも収録されてない短編も2作入ってるので、

NF文庫でなくてSF文庫でOK。

自叙伝の要素もあるが、

捨てろタイプな、苦労して努力して巨匠になりましたという

陳腐な描写が無くてとてもさわやかである。

アーサー・C・クラーク がこんなにユーモアのセンスがあったなんて、

凄い新鮮に感じました。

『現代物理学が描く突飛な宇宙をめぐる11章』 や

パラレルワールド―11次元の宇宙から超空間へ』 で

有名になったスーパーストリング理論の

10次元や26次元の宇宙論も、

SF小説を擁護する為にギャグとして使っているのが素晴しい。

物理や数学ギャグがやや物足りないのが欠点。

フェルミパラドックスネタでハンガリー人が出てくるのは、

「広い宇宙に地球人しか見当たらない50の理由」 と同じだが、

他にもハンガリー人が出てくるのに、

フォン・ノイマンネタが無いのは残念。

五次方程式ネタでガロアラグランジュが出てくるのに、

アーベルが出てこないのは、

巨匠アーサー・C・クラーク 痛恨のミスですな。

天文学や物理や数学の話題だけでなくて、

イカフェチ、海フェチの話題も爆裂してます。

禁断のショタコン(ホモ)疑惑の答えも載ってます。

もちろん否定してますがねw

『トリガー』 アーサー・C・クラーク&M・P・キュービー=マクダウエル 早川文庫SF

トリガー〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)

トリガー〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)

トリガー〈下〉 (ハヤカワ文庫SF)

トリガー〈下〉 (ハヤカワ文庫SF)

特許で大儲けした物理学者が、夢のような研究所を設立した。

そこでは、商用に転ずる可能性がない研究でも、

科学者の好きなことを好きなだけ研究していいのだ!

副所長としてそこに招かれた主人公の化学者は、

牽引ビームの研究を開始する。

ところが、大家さんの前だが、もうたいへん!

ナトリウム基を含むあらゆる火薬を爆発させる点火ビームが出来てしまったのです!

このビームを浴びると全ての火薬兵器は爆発する。

兵器体系戦争体系の革新である。

敵の持つ火薬兵器は敵自身を攻撃することになる。

このビームで全世界を覆えば、銃による武装は不可能になる。

銃撃戦も地雷も存在しない夢のような平和な世界を創造出来る。

大量殺戮兵器ジェノサイドマシンの対極に位置する機械、

ジェネシスマシン創世記機械の誕生である。

だが、特定の勢力が創世記機械で、敵対する勢力の武器を奪い

自分達の兵器だけを守るバリヤーとして使ったら、恐るべき独裁政治の世界となる。

研究所は創世記機械を世界征服を企む悪の組織の攻撃から守れるのだろうか!?

「来やがれ!早乙女研究所がただの研究所ではないことを思い知らせてやる!!」

アレ?なんか間違えたか?(藁

まあ、火薬点火ビームが存在したらというホットイフをそれなりに煮詰めた作品。

水準作だとは思うが、創世記機械ものは、もちろん、

ホーガンの「創世記機械」が最高傑作だから、ホーガンに比べると見劣りする。

キャラ立ちはやや並以下の印象を持った。

平和主義者の大統領と上院議員のキャラが被っているように感じた。

主人公側のキャラよりも、智恵と力とチームワークでトリガーフィールドの裏をかいて、

テロに走る全米ライフル協会の幹部に、感情移入してしまうのは困ったもんだ。

紆余屈折しながらも、全世界は非武装化への道を辿るわけだが、

テロリストの企みが一時とはいえ、成功してしまうのは、平和主義者の主人公側が情けなくて叔父さん泣いちゃう。

銘句も各章の始めに引用されているが、

私が一番共感したのは、アーネスト・ミラー・ヘミングウェイ

「人間は屈伏するように作られてはいない…人間を破壊することはできるが屈伏させることはできない」

です。

『マグニチュード10』 アーサー・C・クラーク&M・マクウェイ 内田 昌之 訳 新潮

マグニチュード10 (新潮文庫)

マグニチュード10 (新潮文庫)

クラークが書いてないのは明白なのに、

私もよく買ったものだと思うが、

これは、マイク・マッケイ(電脳惑星はこの表記だったと思うが)の作品にしては、

大当たりの傑作である。

事実クラークは一字も書いておらず、

850字のアイデアのみをマッケイに渡したのだが、

このSFアイデアが素晴らしい!

日本沈没を越えた世界一の地震SFである!!

(ってこれと日本沈没以外に地震SFってないか?パニックSFで地震が起こるのは2・3あったように思うが・・・)

後漢時代に張衡が発明した、

世界最初の地震計の事も語られていると書けば、

地震SFとして如何に深い作品か、

理解してもらえるであろう。

現実の20世紀の地震学者は2世紀の張衡と地震に対するアプローチは同じである。

これはSFであるから、この作品の地震学者は、

地球を地震の発生しない惑星に改造する方法を思い付くのだ。

惑星改造レベルの話になる究極の地震SFである。

プロローグは1994年、カリフォルニア州ノースリッジ大地震で、

主人公が両親を失う場面で始まり、

エピローグはなんと、2058年(+n年)の月面都市である。

地球を地震の起きない惑星に改造出来たので、

今度は月の改造に乗り出したのか、

それとも、地球が大地震で崩壊したので、月面に避難したのか、

貴方の目で確かめて下さい。

これがワクワクするSFマインドのセンスオブワンダーというものである。