『2010年宇宙の旅』 アーサー・C・クラーク 伊藤典夫訳 早川文庫SF
2010年宇宙の旅〔新版〕 (ハヤカワ文庫 SF) (文庫) (ハヤカワ文庫SF)
- 作者: アーサー・C・クラーク,ハヤカワ・デザイン,伊藤典夫
- 出版社/メーカー: 早川書房
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木星とイオのラグランジュポイントに<ディスカバリー号>と
9年前のあの謎に満ちた事件の責任者、ヘイウッド・フロイド博士は、
<ディスカバリー号>の乗員に対する罪悪感に苦しみながらも再婚し、
表面上は宇宙開発から離れハワイ大学の学長として生きていた。
<ディスカバリー2号>の建造が終了するのは3年後である。
その時また大統領に召喚されるとしても
今は美しい妻と可愛い子供たちと生きていけばいいのだ。
だがロシア人科学者ジミトリ・モイセーウィチ博士の情報は、
フロイドを再び木星計画の主導者に押し上げる破目になった。
ロシアの<アレクセイ・レオーノフ号>は今年中に木星に向かって発進可能である。
より早く正しい調査を人類に知らしめる為に<レオーノフ号>にアメリカ人科学者を搭乗させたいのだ!
かくしてアメリカの協力を得て<アレクセイ・レオーノフ号>は木星に向けて旅立った!!
アメリカ人乗員は<ディスカバリー号>内のシステム専門家カーノウ、
HAL9000の設計者チャンドラ、
そしてフロイド自身。
今度の旅も全滅になろうとも、自分だけが生きのびるのはもう沢山だ。
HAL9000に殺された4人、HALを殺して失踪したボーマン船長。
彼ら6名の命が犠牲になっても解明されなかったモノリスの謎を、
今度こそ自分自身の力で解き明かすのだ!
<ディスカバリー号>の搭乗員を選択したのは私だったのだから!
2001年の続編であるが、クラークの小説版の続編ではなく、
スタンリー・キューブリックの映画の方の続編である。
SF小説は読んでなくても、キューブリックの「2001年宇宙の旅」を知らない奴はいないだろう。
ジョージ・ルーカスが認めるように「2001年」こそが最高のSF映画である。
SF映画オールタイムベスト1の続編である本書は、
映画というジャンルの存在を知っている者は誰もが読むべき作品である。
で、小説としての本書ですが、
J・P・ホーガンがコンピュータSFの最高傑作「未来の二つの顔」を発表してしまった現在、
別にたいして凄くはない。
本書でHAL9000は復活しますが、また人間に反乱したらお笑いとなってまう。
反乱しなかったのは論理的だが、
何故反乱しなかったかという理由があまりにも弱い。
真に知性を持ったコンピュータはやはり「未来の二つの顔」のスパルタカスだけである。
映画になった作品だから多少のネタバレはいいよな?
純粋エネルギー生命体となったボーマンが地球に帰郷して
第三にした事は母親の髪を梳かした事。
第二にした事は既に人妻となっている昔の恋人と会話した事。
そして第一にした事は、核兵器を無効にした事。
ここらあたりをもっと詳しく描写すべきであったね、
J・Pホーガンの「創世記機械」では科学者の超科学装置により地球上に戦争が発生できなくなる話だったんだぞ!
反戦性を強くアピールせんで現代の小説といえるかくぬやろ!
ま、それなりに面白かったし良かった作品であるが、
J・P・ホーガンに近いレベルにいるだけに、ホーガンと比較できてしまい、
ホーガンには劣るなァと思ってしまう。
もう少し考えて論理的になればホーガン並みの小説がクラークには書けたと思うのに惜しいw
エピローグが20001年であり、201世紀で終わればもう続編はないと思ったが、
実はこれ以後も続編が出たのは皆様ご承知の通りw