『遥かなる地球の歌』 アーサー・C・クラーク  山高 昭 訳  ハヤカワ文庫SF

同名の短編を現代的に長編化した、

クラーク版「断絶への航海」である。

ワープ航法などというテレポートと同じようなふざけた超常現象は、

第二次大戦パロディアニメ「宇宙戦艦ヤマト」には似合っても、

まともなSFは使ってはいけないのである。

本書は1985年の科学技術で可能と思われる恒星移民テーマのハードSFである。

ひとつだけ実機は作動してない理論段階のアイデアもあるが、

ワープやらエネルギー充填120%に比べればまともである。

クラークの欠点である人類を見守る未知の存在も、

ハードを追求するなら出すわけにいかず、

太陽系最後の日を迎えるが宇宙人は助けに来ず、

人類は独力でワープエンジンもなしに恒星間へ旅立つのである。

オーバーロード、オーバーマインド、スターチャイルドというフザケタ存在が出てこない、

クラークの良い所だけを集大成した傑作である。

ベスト1と言いたいが、地味すぎるのでベスト2ですね。