カイエ(lapis)さん追悼、国内SFファン度調査(06年オールタイムベスト版)

lapisさんの記事↓
http://lapis.blog.so-net.ne.jp/2008-08-18

引き続いてパクらせていただきました。
国内長編は負けました。
村上春樹ってSFだったのか!SFと呼ぶと売れないので、出版社からのクレームが心配。
春樹入れるのなら、龍も大江も三島由紀夫松本清張もエントリしてもよかったような気もします。
by goldius (2008-08-19 09:11)

>goldiusさん、TB&コメントありがとうございます。
村上春樹の小説は、フィリップ・K・ディックの影響を結構受けているような気がします。エッセーで、ディックが好きだと言っていますし、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』はある意味、ディック風に展開します。まあ、SFといわれても村上春樹は気にしないような気がします。
>龍も大江も三島由紀夫松本清張もエントリしてもよかったような気もします。
僕も同感です。その方が、面白いですね。(笑)
by lapis (2008-08-19 19:48)

■こんばんは
TBありがとうございました。
平井和正がエントリしてないのは不思議だね。
僕もそう思いました。『狼の紋章』や『サイボーグ・ブルース』 などはランクインしてもおかしくないと思います。
lapis 2008-08-19 20:02:20

■狼天使(lapisさん)
以後の平井和正は私の中では無かったことになってますが、初期作品はまともだったので、エントリするべきですよね。
goldius 2008-08-21 08:33:29

『百億の昼と千億の夜』 光瀬龍作 萩尾望都画

百億の昼と千億の夜 (秋田文庫)

百億の昼と千億の夜 (秋田文庫)

少女漫画界の女王モーさまが漫画化したが、

少年チャンピオンに連載されたので、少年漫画扱いとする。

原作は日本SFベスト1の座を小松左京の「果しなき流れの果に」と永遠に争っている大傑作である。

タイムスケールは宇宙の誕生から破滅までなので、世界一スケールの大きいSFである。

宗教的哲学的な話になるので、登場人物は神話宗教の人物ばかりである。

乱暴に分けると、キリスト教側は敵、仏教側が主人公である。

悪役としての言葉遣いの荒いイエス・キリストが新鮮ではある。

で、一般的に一番の人気キャラは仏教の守護神八部衆の一人、阿修羅王であろうが、

私が一番シンクロしたのは、イスカリオテのユダである。

「神とは裁くものなのか!?」

「いけない、いけない、あの男を殺してはいけない!」

「売ったのはお前だぞ」

「金?金なら返す」

キリスト教の神の陰謀に巻き込まれ悲惨な人生を送るユダに滂沱した。

これは、SFであるから、聖書以後のユダの物語も語られる。

有能なユダは洗脳され、その後もキリスト教の為に戦うことになるのであるが、

洗脳が解けて、未来の宇宙ステーション(超空間だったか?)で我に返り、

キリスト教の為の制御ステーションを破壊して回るシーンは、素晴らしいカタルシスであった。

「やめろ、ユダやめるんだぁぁぁ!」

神側の哀願の叫びがとっても心地良かったです。

『果しなき流れの果に』 小松左京

果しなき流れの果に (ハルキ文庫)

果しなき流れの果に (ハルキ文庫)

日本SFの最高傑作。

時間SFだが、「歴史を変えて何故いけない?」と、

主人公側は時間犯罪者組織である。

果しなき時間流は未来から干渉してくる二つの力で作られてきたのだ。

タイムスケールは六千万年の物語だが、

プロローグその一が「象徴的事件」

プロローグその二が「現実的結末」

となっており、本編のSF物語の果に到達するエピローグが、

世界一のSF作家のホーガンの「星を継ぐもの」級の感動である。

「それは長い長い夢のような、いや、夢物語です」

もっともスケールのでかい恋愛物語としても読めます。

『星を継ぐもの』 ジェイムズ・P・ホーガン 池央耿訳

星を継ぐもの (創元SF文庫)

星を継ぐもの (創元SF文庫)

INHERIT THE STARS

J・P・ホーガンのもっとも著名な「星を継ぐもの」である。

長編第1作である「星を継ぐもの」によって、

全世界にホーガンブームが巻き起こったのである。


21世紀、月面で基地建設の為に測量調査していた地図作成班は、

真紅の宇宙服を着た死体を発見した。

が、男の装備は月面のどの基地のものでもなかったし、

行方不明者もいない。

人間そっくりなその男の死亡推定時間は、五万年前だったのである!


五万年前に月面で死んだ男の謎を解こうとするSFミステリでもある。

謎が謎を呼び、それでも複雑にからまった全ての謎を見事に説明する

コペルニクス的転回に主人公は到達する。

ハッピーエンドだと乾杯しようとする科学者たち、

その土壇場で主人公のライバルは、

「乾杯するのはまだ早い!」

と叫んだ!!


意外な感動的なドンデン返し。

そしてエピローグは読者の期待通りの超ハッピーエンド。 

エラリー・クイーンズミステリマガジンの書評欄にも採り上げられた

「星を継ぐもの」はSFでしかやれない壮大な感動的な大ドンデン返しを

たぐいまれなハッピーエンドで提示したのだ。

ハードSFというよりSFミステリとして私は高く評価する。

ホーガンの最高傑作は「未来の二つの顔」だと思うが、

「星を継ぐもの」も古今東西SFオールタイムベスト10に入るだけの価値はあると思う。

鏡明氏を参考にするならば、「星を継ぐもの」は、

A・C・クラークの「太陽系最後の日」とアイザック・アシモフの「銀河帝国の興亡」を

足して2で割った以上の感動を与えてくれる筈である。

「太陽系最後の日」よりは遥かに「星を継ぐもの」の方が感動出来ますよ。

感動ということのみならば、ファウンデーションよりも上かもね。

単なるハードSF、単なるSFミステリではないのだよホーガンの世界はね。

ラストに感動して「うぉぉぉぉ!」と叫んで部屋中を転げまわってしまったのは、

「星を継ぐもの」だけである。

オールタイムベスト1にしないのは、最後まで読めない人もいるかもと危惧するからである。

読んだところで感動する感性がない人には、エピローグに感動出来ないかもと危惧するからである。

自分が感動した量は世界一の作品だけどね。

『妖星伝』 半村良

完本 妖星伝〈1〉鬼道の巻・外道の巻 (ノン・ポシェット)

完本 妖星伝〈1〉鬼道の巻・外道の巻 (ノン・ポシェット)

伝奇SFというジャンルを確立した半村良の最高傑作。

「産霊山秘録」の方がべストだという説も有り得るが、

江戸時代を舞台にした時代SFと思わせて、

ラストは宇宙に飛び出してしまったこちらの方がカタルシスが凄かった。

宇宙には生命のある星はほとんどない。

なのに、何故、地球には生命が満ち溢れ、

悲惨な弱肉強食の世界が展開されているのか?

江戸時代に生きていた超能力者の宇宙人は、

地球を妖星だと認識する。

妖星地球の謎に迫る伝奇SFである。

将棋SFであるというのも斬新である。

物語途中で詰め将棋が出題され、

地球上での最後の戦いは、その解答通りに、

キャラクター達が戦って死んでいくのである。

地球が妖星になった理由がまさにセンスオブワンダーに満ちたSFであった。

国内SFファン度調査(06年オールタイムベスト版)

引き続きカイエ さんの記事 からバクってまいりました。

『百億の昼と千億の夜』光瀬龍
『果しなき流れの果に』小松左京
『妖星伝』半村良
『マイナス・ゼロ』広瀬正
『宝石泥棒』山田正紀
『神狩り』山田正紀
『復活の日』小松左京
『産霊山秘録』半村良
日本沈没小松左京
石の血脈半村良
『たそがれに還る』光瀬龍
ドグラ・マグラ夢野久作
『消滅の光輪』眉村卓
『第四間氷期安部公房
『継ぐのは誰か?』小松左京
家畜人ヤプー沼正三
『エイダ』山田正紀
脱走と追跡のサンバ筒井康隆
『我が月は緑』今日泊亜蘭
『日本アパッチ族小松左京
以上20作品で、あなたは682 人中 188番目で偏差値は54.5です。

日本SFに関しては、驚異の大型新人山田正紀が登場した時点で終わってます。

山田正紀全部読んでないのに、山田正紀以後の新人なんて読む気しませんw

平井和正がエントリしてないのは不思議だね。

短編は

「おーい でてこーい」星新一
『ゴルディアスの結び目』小松左京
「ボッコちゃん」星新一
「神への長い道」小松左京
「お召し」小松左京
「ハイウェイ惑星」石原藤夫
「間接話法」筒井康隆
「銀河ネットワークで歌を歌ったクジラ」大原まり子
「結晶星団」小松左京
「地には平和を」小松左京
「午後の恐竜」星新一
「X電車で行こう」山野浩一
「大いなる正午」荒巻義雄
以上13作品で、あなたは442 人中 208番目で偏差値は48.2です。

あら、50切っちゃった。

栗本薫の「優しい接触」が入ってないのは許せん!

SFでないかもしれないが、半村良の「箪笥」も入れるべき。

かんぺむさしやヨコジュンも入れてやれよw

エントリ表作った奴のセンスが悪いと思うww

『マイナス・ゼロ』 広瀬正

広瀬正・小説全集・1 マイナス・ゼロ (集英社文庫)

広瀬正・小説全集・1 マイナス・ゼロ (集英社文庫)

「マイナス・ゼロ」は広瀬正の最高傑作であり、

本の時間SFの最高傑作である。

ハインラインの「夏への扉」とタメを張れる大傑作。

まあ、昭和の過去世界の描写は日本人にしか受けないだろうが、

ラストの1Pで全てが収斂する見事な構成力に、

誰もが「そうだったのか!」と感動して叫んでしまうだろう。

『宝石泥棒』 山田正紀

宝石泥棒 (1982年) (角川文庫)

宝石泥棒 (1982年) (角川文庫)

本書のベストセリフ

「いったい愛などというものに、

はたしてそれほどの価値があるのだろうか……」


想像できないものを想像する天才山田正紀

本作のモチーフは、植物知性というか、現実とは全く違う生態系のファンタジー世界で、

テーマは人類進化テーマの特殊タイプ人類退化ものである。

月が消滅した超未来、

地球には全高100メートルを越す巨木が生い茂り、

人類は食物連鎖の頂点から滑り落ちていた。

人間より優れた植物や神が存在する世界での冒険ファンタジーと思わせて、

ラストは小松左京の『結晶星団』ぽいSFになります。

女とセクースする為という誰もが理解出来る動機で冒険に旅立った主人公は、

インドシナファンタジー世界、

中華ファンタジー世界、

イスラムファンタジー世界を巡る冒険の果てに成長し、

愛などどうでもよくなるのが素晴しい!

想像の翼を自由に羽ばたたせた驚天動地の異色のファンタジー世界とは言うが、

凡百の作品では、テックレベルと政治形態が存在しなかった組み合わせであるだけである。

職業階層や倫理観が現実世界とほとんど同じ糞ファンタジーが氾濫しているが、

さすが天才の山田正紀、狂人という職業が出てくるわ、

四親等間のセクースが一番のタブーとされたり、

オリジナリティが物凄い!

大長編というよりは、三つの中篇連作だが、

どれひとつとっても軽く日本ファンタジー大賞の水準は越えている。

ファンタジー世界にモンスターや神が存在する理由も説明してしまう完璧さ。

ファンタジーというものは、主人公がパーティを組んで冒険するものだが、

ラストで主人公チームと同じ職業構成のパーティが複数あったことが明かされ、

主人公造形の点でも異色である。

主人公なんだが、実は量産タイプの雑魚だったのだw

主人公チームなんだから勝つという安易なハッピーエンドにはならずに、

裏側に神の陰謀があった素晴しいストーリー展開である。

巨大蜘蛛とか空飛ぶ魚とかファンタジー世界の動物が、

見事な生態系を作っているファンタジーの傑作である。

実はSFであるが、難しい理屈は気にしないで、

魅力的な世界に浸って下さい。

表に見える世界だけでも充分傑作なのに、

裏にしっかりとした理屈も用意されているという完璧な世界である。

読み易さと作品の完成度と感動の量を比較すれば、

もっとも支持される山田正紀作品なのは間違いない。

ピカイチのお勧め作品。

『五番目の女』 ヘニング・マンケル 創元推理文庫

五番目の女 上 (創元推理文庫)

五番目の女 上 (創元推理文庫)

五番目の女 下 (創元推理文庫)

五番目の女 下 (創元推理文庫)

"クルト・ヴァランダー"シリーズ第六作。

本書のベストセリフ

ホモセクシャルの男たちが兵隊にわざわざ応募するとは、ちょっと考えられませんが」

「いや、そんなことはない。ホモセクシャルの男たちが兵士になるのはまれなことではない。

自分の性的嗜向を隠すためにそうする者もいるという」


相変わらずジェンダー観と言うか人権意識のバランス感覚が素晴らしい!

訳者も福沢諭吉並の天才。

嗜好でも指向でも無くて嗜向ですぞw

人間ドラマが素晴しいが、つまんないことを描きすぎの鬱陶しい純文学には走らずに、

エンタメのミステリとして巧くまとまっている。

国際的視野のメッセージ性、テーマ性も感動を呼ぶ。

本書の化け物のような女犯人(身長180cm、80kgの男も軽々と投げ飛ばす)もとても魅力的。

トム・ロブ・スミスの『グラーグ57』の女テロリストと競演させてやりたいと思いました。

21世紀にもなっても弱い女を守る為に正義の男と悪の男が戦うなどという

古臭い小説書いてる奴は、パレスチナゲリラの支援にガザに行って、

マンケルの命を救う為、盾になって死ぬよろし!

小説書くだけでは満足出来ずに、

パレスチナ(ハマス)の味方して、

イスラエル(と裏に潜むイギリス、アメリカ)を敵に回すマンケルは凄いよな。

日本の狭い文壇の中で喧嘩している純文学の先生たちには笑っちゃいますなww

http://ameblo.jp/honyomi-world/entry-10661882324.html