『百億の昼と千億の夜』 光瀬龍作 萩尾望都画

百億の昼と千億の夜 (秋田文庫)

百億の昼と千億の夜 (秋田文庫)

少女漫画界の女王モーさまが漫画化したが、

少年チャンピオンに連載されたので、少年漫画扱いとする。

原作は日本SFベスト1の座を小松左京の「果しなき流れの果に」と永遠に争っている大傑作である。

タイムスケールは宇宙の誕生から破滅までなので、世界一スケールの大きいSFである。

宗教的哲学的な話になるので、登場人物は神話宗教の人物ばかりである。

乱暴に分けると、キリスト教側は敵、仏教側が主人公である。

悪役としての言葉遣いの荒いイエス・キリストが新鮮ではある。

で、一般的に一番の人気キャラは仏教の守護神八部衆の一人、阿修羅王であろうが、

私が一番シンクロしたのは、イスカリオテのユダである。

「神とは裁くものなのか!?」

「いけない、いけない、あの男を殺してはいけない!」

「売ったのはお前だぞ」

「金?金なら返す」

キリスト教の神の陰謀に巻き込まれ悲惨な人生を送るユダに滂沱した。

これは、SFであるから、聖書以後のユダの物語も語られる。

有能なユダは洗脳され、その後もキリスト教の為に戦うことになるのであるが、

洗脳が解けて、未来の宇宙ステーション(超空間だったか?)で我に返り、

キリスト教の為の制御ステーションを破壊して回るシーンは、素晴らしいカタルシスであった。

「やめろ、ユダやめるんだぁぁぁ!」

神側の哀願の叫びがとっても心地良かったです。