『星を継ぐもの』 ジェイムズ・P・ホーガン 池央耿訳

星を継ぐもの (創元SF文庫)

星を継ぐもの (創元SF文庫)

INHERIT THE STARS

J・P・ホーガンのもっとも著名な「星を継ぐもの」である。

長編第1作である「星を継ぐもの」によって、

全世界にホーガンブームが巻き起こったのである。


21世紀、月面で基地建設の為に測量調査していた地図作成班は、

真紅の宇宙服を着た死体を発見した。

が、男の装備は月面のどの基地のものでもなかったし、

行方不明者もいない。

人間そっくりなその男の死亡推定時間は、五万年前だったのである!


五万年前に月面で死んだ男の謎を解こうとするSFミステリでもある。

謎が謎を呼び、それでも複雑にからまった全ての謎を見事に説明する

コペルニクス的転回に主人公は到達する。

ハッピーエンドだと乾杯しようとする科学者たち、

その土壇場で主人公のライバルは、

「乾杯するのはまだ早い!」

と叫んだ!!


意外な感動的なドンデン返し。

そしてエピローグは読者の期待通りの超ハッピーエンド。 

エラリー・クイーンズミステリマガジンの書評欄にも採り上げられた

「星を継ぐもの」はSFでしかやれない壮大な感動的な大ドンデン返しを

たぐいまれなハッピーエンドで提示したのだ。

ハードSFというよりSFミステリとして私は高く評価する。

ホーガンの最高傑作は「未来の二つの顔」だと思うが、

「星を継ぐもの」も古今東西SFオールタイムベスト10に入るだけの価値はあると思う。

鏡明氏を参考にするならば、「星を継ぐもの」は、

A・C・クラークの「太陽系最後の日」とアイザック・アシモフの「銀河帝国の興亡」を

足して2で割った以上の感動を与えてくれる筈である。

「太陽系最後の日」よりは遥かに「星を継ぐもの」の方が感動出来ますよ。

感動ということのみならば、ファウンデーションよりも上かもね。

単なるハードSF、単なるSFミステリではないのだよホーガンの世界はね。

ラストに感動して「うぉぉぉぉ!」と叫んで部屋中を転げまわってしまったのは、

「星を継ぐもの」だけである。

オールタイムベスト1にしないのは、最後まで読めない人もいるかもと危惧するからである。

読んだところで感動する感性がない人には、エピローグに感動出来ないかもと危惧するからである。

自分が感動した量は世界一の作品だけどね。