『ブラッククロス』 グレッグ・アイルズ 講談社文庫

敵方のナチスのシェルナー少佐がデラかっちょええ!

悪のナチスなのに、ユダヤ人女性を強姦せずに、

一週間の心の準備を与える紳士。

敵のナチスにセクースを一週間は我慢出来る紳士を配し、

味方のイギリスコマンドは、現地妻と一晩に二発やるというケダモノw

ヒトラーは悪の権化と言うが、

いきなり完成された究極の悪として、

歴史に登場してきたわけではあるまい。

ヒトラーの暴走を止められなかった正義の連合国の責任も匂わす異色作。
ヒトラーよりヒムラーの方が巨悪として書かれているのも新しい。

正義のヒーロー、マッカーサーとパットンとモンゴメリーが、

自国のアメリカ人民を虐殺した事件も語られています。

正義のイギリスコマンドが、

ナチスドイツの毒ガス工場の守備隊を、

モルモットとして収容されているユダヤ人もろとも、

イギリス製サリンで虐殺しようとする話である。

犯行の証拠を残さなければ、

ナチスの事故として歴史に残る。

正義の主人公側が何の罪もない女子供も虐殺し、

それを敵の罪としてなすりつけようとする傑作な陰謀小説。

小説としては会話文に無駄な描写が多いと思うが、

絶対正義のイギリスアメリカ連合軍対絶対悪のナチスドイツという

視点に飽き飽きしている諸兄はどうぞ読んでください。

ジェンダー観は古臭いので、ギャビン・ライアル には劣るし、

非情な戦争小説としても、もちろんアリステア・マクリーン にはかなわないが、

ジャック・ヒギンズ よりは良いだろう。

巧く真似出来ているとは言えないが、

デズモンド・バグリィ やボブ・ラングレー ぽいところもあります。

これの「生命の泉」ネタに興味を持った人は、

皆川博子 の『死の泉』 も読んでやって下さい。

シェルナー少佐にそっくりな人物が出てきますぜw

ブラッククロス〈上〉 (講談社文庫)

ブラッククロス〈上〉 (講談社文庫)

ブラッククロス〈下〉 (講談社文庫)

ブラッククロス〈下〉 (講談社文庫)