『死の周辺』 ヒラリイ・ウォー 早川ポケミス

至高の古典にして究極の前衛のヒラリー・ウォー 作品。

これはフェローズ署長シリーズだが、

フェローズ署長は第三部にならないと登場しないという異色作。

第一部は犯人視点、第二部が被害者視点である。

今回は倒叙物というか、ノワールでんな。

童貞の窃盗犯が悪い友人や女に影響されて、

殺人犯にまで転落していく軌跡を丹念に、

しかも無駄なく描いた。

悪女は当然色仕掛けするが、

挿入シーンは無い上品なヒラリー・ウォー 作品のパターンは踏襲してます。

第一部だけでもノワールとして傑作だが、

もちろん第三部にどんでん返しがあります。
トリックの無い単なるノワールなどミステリの名に値しない。

文学に擦り寄ったサービス精神を忘れたノワールではなくて、

ノワールと思わせて本格推理に回帰する

ヒラリー・ウォー は見事なプロのミステリ作家である。

死の周辺 (1966年) (世界ミステリシリーズ)

死の周辺 (1966年) (世界ミステリシリーズ)