『早春賦』 山田正紀 角川書店

時は1613年、舞台は甲州

大久保長安の反乱軍の残党が立て篭った、

八王子城を落とせ!
攻め手にとっては八王死と呼ばれる、

前田利家さえ苦労した、

堅城八王子城の守りの要を破壊する為、

武田家臣団の遺児、"風"は、

幼馴染の"林""火""山"と共に、

困難な任務に挑戦する!

が、"火"は裏切った!

"風"は任務を果たすことが出来るだろうか?

伝奇の要素のない普通の時代小説。

忍者は出てくるが、

忍術、剣術、体術より、

敵を騙す頭脳戦が決め手になるかっちょええ時代小説。

任務を授けられる前の青春群像がうっとおおしいが、

夢を持たずに地味に生きる事を訴える素晴しい結末を迎える。

武田騎馬軍団は存在しなかった等の、

科学的に正しい時代小説である。

両手で剣を握る正当剣法を馬鹿にしてるのが痛快!

知恵を巡らせた戦場で、太刀同士で剣戟するのは愚か者である。

平和な江戸時代に確立した剣術のとろくささが理解出来る

知的レベルの高い本である。

セリフのほとんどが甲州弁と尾張弁なのもリアル。

正紀は普通の時代小説家としても天才であった!

早春賦 (角川文庫)

早春賦 (角川文庫)