『ドラゴン・ティアーズ』 ディーン・クーンツ 新潮文庫

本書のベストセリフ

「たしか作者はフランシスコ・デ・ゴヤ

――初等美術観賞の授業でいまも記憶にのこっているのは、それだけだった。

見る者の心胆を寒からしめ、見る者の神経をすり減らし、

恐怖と絶望の感覚を味わわせる絵だ。

そのいちばんの理由は、

頭部をうしなった血まみれの人体を貪り食らう魔物めいた巨大な食屍鬼の姿が、

絵のなかに描きこまれているからだった。

 見ていると心の深い場所をかき乱される雰囲気といい、

構図とその出来ばえのすばらしさといい、

これが史上屈指の絵画の一枚であることに疑いはなかった」

もう一丁いくぜ!

「愛という感情が秩序を乱すものだからだ。

愛には義務やら献身やらがつきまとい、

愛は人間関係をもつれさせ、感情の共有をともなう。

他人を愛していることを認めたがさいご、

その愛の対象を大大的に自分の生活に招き入れる羽目になる。

そして相手は、だらしない習慣だの無分別な趣味だの、

整理されてない意見だの、無秩序な態度だのをいっしょにもちこんでくるのだ」


最凶の化物の最強の能力、ザ・ワールド!時よ、止まれ!!

いいぞいいぞいいぞ、おもしろいな。

ゴヤの話題が出る世界一知的レベルの高いホラー。

怪物とヒーローヒロイン以外の時間が静止した世界での逃避行が圧巻。

元SF作家のクーンツなので、科学考証もそれなりに密度があって、

知的興奮します。

犬視点(犬の一人称)もあり、犬SFとしても、

いいぞ、いいぞ、いいぞいいぞいいぞ、おもしろいな。

ドラゴン・ティアーズ〈上〉 (新潮文庫)

ドラゴン・ティアーズ〈上〉 (新潮文庫)

ドラゴン・ティアーズ〈下〉 (新潮文庫)

ドラゴン・ティアーズ〈下〉 (新潮文庫)