『昭和の名将と愚将』 半藤一利 文春新書

本書のベストセリフ

大本営参謀本部作戦課長稲田正純「ともかく悪いのはみんな関東軍だ、

    現地が言うことをきかなかったからあんなことになった」

司馬遼太郎「こんなやつが作戦課長だったのかと心底あきれた」

司馬遼太郎歴史小説家として昭和時代を書こうと思って、

昭和の軍人に取材中の時の有名なエピソードですな。

司馬遼太郎の小説が面白いのは主人公が魅力的だからである。

取材すればするほど昭和の軍人は糞ばかりと判明し、

魅力的な人物が一人もいないので、

結局、司馬遼太郎は昭和ものは書けずに死んだわけであるが、

昭和の軍人は糞ばかりと言うのは、

半藤一利の意見でもあった筈だが、

本書のタイトルに名将が付いていて、半藤もついに転向したか!

と早合点してはいけません。

世界史レベルの絶対評価なら

語るに足る名将なんて昭和の日本にはいなかったが、

昭和の軍人を相対評価で、名将と愚将に無理やり分けた企画ものですw

目くそ鼻くその違いでしかないが、

分類は以下の通り。

名将

栗林忠道

石原莞爾永田鉄山

米内光政と山口多聞

山下奉文武藤章

伊藤整一と小沢治三郎

宮崎繁三郎と小野寺信

今村均山本五十六

愚将

服部卓四郎と辻政信

牟田口廉也瀬島龍三

石川信吾と岡敬純

大西瀧治郎富永恭次・菅原道大

父親たちの星条旗」と「硫黄島からの手紙」で有名になった

栗林忠道の話題を最初に持ってくるあたり、

半藤も商売が巧くなったよなw

大東亜戦争オタクには有名な話題ばかりで、

新鮮味は少ないだろうが、

宮崎繁三郎が常勝の天才だと私は気づいてなかったので、

宮崎繁三郎の話題は新鮮でした。

ノモンハンでもインパールでも宮崎繁三郎が指揮してる部隊は負け知らず。

ノモンハンでもインパールでも生き抜いて、

終戦の日を迎えた宮崎繁三郎のセリフがまたかっちょええ!

「私の努力が足りなくて敗戦国になったことを国民の皆様にお詫びします」

ときたもんだ!

戦術面で宮崎繁三郎のような名将がいても、

その上のレベルの作戦や戦略がアホやさかい、

どうやっても大日本帝国は負ける運命でしたけどなw

愚将では瀬島龍三ネタが笑えます。

瀬島龍三は自分をネタにした本のゲラを入手し、

自分を美化した内容に書き換えて印刷所に渡したそうですw

戦争中の話題だけでなく、戦後の悪しき言動も告発してるのはちょっとレア。

瀬島龍三が死んだのは最近(去年頃?)だったよな。

瀬島龍三の妨害行為は発生しなくなったので、

瀬島龍三ネタはこれからも新ネタが出てきそうで楽しみですな。

それから、陸軍一の愚将は辻政信でケテーイだが、

海軍一は石川信吾らしいですぞ。

石川信吾はマイナーぽいが、

これから悪役としてブレイクする予感。

軍オタの人は必読。

個人のネタばかりではなくて組織論もあるので、

組織のリーダーに成ろうと思う人にも参考になるだろう。

昭和の名将と愚将 (文春新書 618)

昭和の名将と愚将 (文春新書 618)