『軍犬と世界の痛み』 マイクル・ムアコック 早川文庫SF

”永遠の戦士フォン・ベック”シリーズ第①巻

本書のベストセリフ

「貧しい世界ですから、

悪しき世界、

堕落に向かって衰えゆく世界ですから。

犠牲も払わず愛を求める世界です。

欲望を即座に充足させることを求める世界ですよ、

幼児のように、獣のようにね。

そして充足が得られないと、

腹を立て、癇癪をおこして暴れまわる」


我侭なガキやケダモノのような人間がデカイ面してる現実社会を照射した

教訓溢れる傑作。
小説としてプロットが単純過ぎて物語としては普通だが、

神学的、倫理学的な参考書として傑作。

神にも悪魔にも成ろうとしてはいけない。

普通のつまんない人間としての、

あるがままの自分(他人)を認めることが大事だと説いた、

神と悪魔の戦いを超克した調和を勧める感動作品。

ムアコックのエタチャンものとしては、

アリオッホ(アリオッチ)の地獄の軍勢も出てきまっせ!

17世紀の30年戦争が舞台なので、

ルクレツアの話題も語られます。

エヴァンゲリオンで有名になったリリスも出てきます。

固有名詞にピンときた人は必読。