『ハイダウェイ』 ディーン・R・クーンツ 文春文庫

本書のベストセリフ

「神がその"たったひとりの子"を男としたのは誤りではないか?

キリストは女であるべきではなかったのか?

古来、あらゆる苦痛を耐え忍んできたのは女であり、

したがって女こそがもっとも偉大な自己犠牲の、

慈悲の、超越性の象徴となるべきではないのか?」

ネタ被りクーンツとして小ネタが、『対決の刻』 (魅力的な障害者の少女)、

『コールド・ファイア』 (夢がシンクロしテレオプティカー)、

『サイレント・アイズ』 (養子縁組)、

『ファンハウス』 (での惨劇)、

ストレンジャーズ』 (敬語を使う礼儀正しい殺人鬼)、

などと被っているが、

寄せ集めの破綻作品ではなくて、

それなりにまとまっている佳作。

クーンツにはSF寄りのホラーが多いが、

これは地獄の王子と天使の戦いを描いた

神学(悪魔学)寄りのまともなホラーである。

悪魔のしもべとして、死体を組み替えて芸術オブジェにする敵役が素晴しい!

死のエージェントだから死体が大好きなので殺人する。

生は嫌いなので、生を生み出すセクースも嫌い。

新しい生命を生む女がとくに嫌いで、

女を攫っては、レイプせずに殺すという、

例によって筋が通った悪役が素晴しい!

ストーリー的にもマイクル・コナリー の傑作、

『わが心臓の痛み』 と同じ落ちになるのかとワクワクしたぞ。

なりませんでしたが、普通のカットバックで、

無駄な人物、サブストーリーはほとんどないので、

一気読み出来るお手頃な長さの佳作である。

ハイダウェイ (文春文庫)

ハイダウェイ (文春文庫)