『死の王』 タニス・リー 早川文庫FT

600P越えで、ほとんど改行無しで、

難しい漢字がいっぱい詰まっている重厚なファンタシィ。

浅羽莢子に匹敵する漢字萌えの良い文である。
インカーネーションは具現よりは顕現とか権現と訳して欲しかったがw

内容は不死の魔術師達のスーパー魔法大戦である。

闇の公子も死の王も雑魚みたいなもん。

元は人間だが、不死になった魔術師達の

波瀾万丈の大河ドラマである。

魔法や忍法の世界では、

不死身の存在というのは必ず出てくるが、

本書は不死身ばかりがわさわさと大量に出てきますw

全ての攻撃を無効にする不死身の存在と、

攻撃は有効だが、灰になっても死なない不死身の存在と、

両者のハイブリッドタイプで、同じ武器の攻撃では二度と死なないタイプも出てきます。

スーパー魔法大戦と書いたが、不死身同士の戦いはラストである。

途中でアズュラーンに封印される不死者もいるが、

ラストには復活するので期待汁!

ゲーム的な魔法合戦の面白さというよりは、

文学寄りのファンタシィである。

リーは小説を書くことが本当に好きなんだなと堪能出来過ぎる一冊。

プロット立ててもこんな長い話、

金儲けの為に小説書いている奴は絶対に書かないだろう。

半分に纏めるよなw

善も悪も敵も味方も大物も小物も物語の中で縦横無尽に錯綜する

ワイドスクリーンバロックファンタシィである。

超絶な魔法すら霞む豊潤な物語世界に酔いしれろ!

記事数を稼がないとランクが下がる書評ブロガーには、

読むのに時間がかかりすぎて不利な本だが、

物語に浸りたい人にはお勧め。

ノアの方舟がけったいな舟として揶揄される、

人殺しが大好きなあの残酷な無慈悲な神以外にも、

神々も妖精も妖魔も魔術師も存在するこの魅力的な世界に浸って下さい。

あの神も雑魚の一人でしかないので、

この世界ではノアの一族以外にも人間が生き残っているのが素晴らしい。

けったいな方舟に乗せて貰わなくても、大洪水を生き延びた人間がいるのは、

キリスト教世界を矮小化した素晴しいファンタシィの世界である。

あの神よりリーの方がネ申として相応しいと思う。

聖書より長い物語もリーには書けるでしょうな。

死の王 (ハヤカワ文庫FT)

死の王 (ハヤカワ文庫FT)