『竜の眠る浜辺』 山田正紀 ハルキ文庫

想像できないものを想像する天才山田正紀

今回のモチーフは、白亜紀に人間の街がタイムスリップで、

テーマは人間賛歌、陳腐な日常性の素晴しさである。

SFというよりは魅力的な人間群像の青春ユーモアファンタシィであるが、

SFとしてもティラノサウルスが人間と遭遇しても、

人間を襲うことはないという理屈が面白かった。

危険なのは全高2メートル程度の人間サイズの恐竜である。

人間を幸福にしない現代日本社会のシステムへの警鐘が感じられるが、

深刻な話ではありません。
傘で目玉を突付いて恐竜を撃退するおばあちゃん等、

愉快なキャラが目白押しである。

深読みしたい人にはちゃんと謎のキャラも用意されています。

タイムスリップの原因は明示されないが、

空想する手掛かりは与えられています。

ラストシーンの意味は自由に空想せよ!

竜の眠る浜辺 (ハルキ文庫)

竜の眠る浜辺 (ハルキ文庫)