『マリコ/マリキータ』 池澤夏樹 文春文庫

本書のベストセリフ

ピエール「すべてが争いなしに、

予定調和のうちにうまく配分される世界だったらどんなにいいだろうとずっと思っていた。

自分と他人の区別がないのならどんなに楽だろうと思ってきた。

感覚をすべて共有できたら、

全部が一体となって一つの生物だったら、

ぼくと影の男の間をケーブルで結んでしまえたら、

ぼくと彼で彼女を共有するというのではなく、

ぼくと彼が一つの個体の中に均等に溶け込んでいたら。

ぼくという意識がもっとずっと希薄で、

ぼくたちという意識の方がずっと濃厚だったら。

ぼくはいつもそういうことを考えてきた。

誰にも言えないことを夢想して日を送る者、

今の攻撃的な社会から見ればほとんど脱落者だった。

それがぼくだよ」


マリコ/マリキータ』
『梯子の森と滑空する兄』
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『冒険』
『帰ってきた男』

の五作が収録されている短編集。

芥川賞受賞の純文学作家だが、

池澤夏樹は理系の作家なので、

矮小な私小説は一作も無く、

読むに堪えるレベルには達しているが、

知的レベルの低い芥川賞レベルでもOKという

手抜きを感じてしまった。

主人公や語り手が、

文化人類学者、

数学者、

気象学者、

薬剤師、

バイリンガルなテレビ局員

などという、

純文よりはSF寄りのキャラを登場させているが、

ハードな思索には至らない。

文化人類学ネタでカーゴカルトを出し、

タケルというキャラも出す池澤夏樹は、

諸星大二郎のファンだと思う。

問題は文学者でありながら、

池澤夏樹の知的レベルは、

漫画家の諸星大二郎にも劣ると思われることである。

こんな低レベルの作品ででかい面できる芥川賞作家はお気楽でいいよな。

質の高いSF漫画、SF小説に全てが劣る作品ばかりである。

文章は平易で読み易いので、

サクサク読めるので、まだ見捨てることはしない。

長編なら期待出来るような気もする。

マルケスのようなマジックリアリズム作品も書いているそうなので、期待出来る。

マルケスのようにギャグをやる余裕はないかもしれないが、

真理子/真理キタ━━(゚∀゚)━━!

などというギャグもキボンヌw

マリコ/マリキータ (角川文庫)

マリコ/マリキータ (角川文庫)