『井上成美』 阿川弘之 新潮文庫

最後の海軍大将井上成美の物語である。

世界一の悪の阿呆の大日本帝国軍であったが、

こんな素晴しい大将もいたのである。

メカフェチの井上成美に燃え萌えですぅ。


本書のベストセリフ

「国軍の本質は、国家の存立を擁護するにあり。

他国の戦に馳せ参じるが如きは、その本質に違反す。

前(第一次)大戦に、日本が参戦せるも邪道なり。

海軍が同盟に反対せる主たる理由は、この国軍の本質という根本観念に発する。

いわゆる自動的参戦の問題なり。

たとえ締盟国が、他より攻撃せられたる場合においても、

自動的参戦は絶対に不賛成にして、この説は最後まで堅持して譲らざりき」


海軍きっての合理主義者であり、

精神主義を嫌い、「ラディカル・リベラリスト」を自認していた。

軍神・東郷元帥については、

「人間を神様にしてはいけません。神様は批判できませんからね」

と言っている。

アンタ、現人神天皇様の軍隊の大将だったくせにw

兵学校の校長としての名セリフ

「いわゆるゼントルマンならば、

デューティの観念があって、

レスポンシビリティを身につけた人間ならば、

そのまま戦争に出しても使えるという信念を私はもっていた。

・・・軍事学なんか、やりたかったら卒業してから、いくらでも勉強する機会はある。

・・・むしろ、兵器を理解するだけの頭が必要だ。

結局メッカニックの知識が必要であり、メッカニックを良く教えろと言いました。

私は、この青年達が可哀想だと思ったのです。

戦争に負けてほっぽり出されたら、どうするんだろうと思ってね。

・・・国のためだなんて言って、勇んで兵学校に入ってきて、

戦争に負けて、中途で放り出されたら、

鉄砲の撃ち方なんかばかり覚えていても、

さて、社会で働こうといったって、どうなるかと」

井上成美 (新潮文庫)

井上成美 (新潮文庫)