『モンゴルの残光』 豊田有恒

世界一の歴史改変SF。

J・P・ホーガンの歴史改変もの「プロテウスオペレーション」より、

遙かにシビアで泣ける。

モンゴル帝国が世界を支配している未来社会、

黄色人種が霊長類の最優良種であり、次が黒人、

白人は人権が認められない奴隷種族であった。

人種差別のない理想世界の建設を夢見る白人の主人公は、

歴史を変える為に元帝国の創成期にタイムトラベルする。
名も無き雑魚兵では、歴史を変えるターニングポイントに影響を与えにくい。

主人公は元帝国でモンゴル名を名乗り、武将として出世していく。

自分のいた未来では、白人を搾取する鬼のような黄色人種たちは、

元帝国の時代では、自分の良き同僚となる。

歴史を変える為に元帝国を滅ぼすということは、

自分を採りたててくれた元人に対する裏切りである。

主人公は個人の幸福を捨て、裏切り者の汚名を被っても、

未来社会の為に歴史改変出来るのだろうか?

歴史の非情さに思いっきり泣いて下さい。

モンゴルの残光 (ハルキ文庫)

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