『戦国自衛隊』 半村良
SFでしかやれない優しさというものがある。
下町人情派の半村良が、戦ってはいけない宿命の自衛隊の方々に、
おもう存分暴れてもらおうと、戦国時代という舞台を用意したのが戦国自衛隊である。
原作は中篇と言っていいほどの短い話だが、
SFとしての整合性はありそれなりに読めるが、
やっぱり短かすぎて物足りないと思ってしまう。
ならば、映画版の方が良いかというと、
私は実は、田辺節雄の漫画版が一番巧く話しを膨らませていると思う。
原作ではほとんど活躍しない哨戒艇を、
映画では反乱軍のアジトとし、自衛隊員同士の哨戒艇とヘリの戦闘アクションが行われるが、
漫画では大量の九鬼水軍を哨戒艇で爽快に撃沈するという素晴らしいシーンがある。
戦闘シーンは膨らませているが、漫画版にはエロいシーンが一箇所もないのもいい!
そして、漫画版には天皇制批判とも読める素晴らしいセリフもある。
田辺節雄の師匠の望月三起也は右翼寄りだと思うが、
田辺節雄は左翼っぽい。
硬派な左翼アクション漫画として、田辺節雄の「戦国自衛隊」は必読の書である。
オチは小説と同じだが、小説は淡々と説明して終わるが、
漫画はアクション表現で描写しているので、より感動的である。
「戦国自衛隊」は漫画版だけ読めばいい。
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