『ゴールド−黄金−』 アイザック・アシモフ 早川文庫

巨匠アシモフ最後のSF短編集である。
と言ってもまともな小説は、
「キャル」
「ゴールド−黄金−」
の2作だけで、残りは読む必要がないエッセイばかりだが、
「キャル」唯一つの為だけにも買う価値は十分あります。
「ゴールド−黄金−」にも共通して言えることだが、
老衰死が近づいたアシモフが、初めて真摯に
クリエイターの人生を深く考察した傑作である。
創作する人生とは何か?
創作物を残すとはどういうことか?
クリエイターの本質を追求した、全小説家必読の作品である。

「キャル」と「ゴールド−黄金−」を読んで何も感じない人は、
クリエイターとしての感性がありません。
殺人犯にはならないように地味な人生を歩んで下さい。
で「キャル」であるが、
小説家の買ったお掃除ロボットが、
小説家になることを夢見るお話です。
ヘタクソな文を書いているうちは、
作家先生は熱心にロボットを教育するのだが、
自分を凌駕する文を「キャル」が書き始めた時、
大作家先生様はキレル!
「お前はロボットだ!
本当の生を生きていないお前が魂がこもったリアルな小説を書けるものか!」
「キャル」は傷つき思索する。
「リアルな生とは何か?
リアルな描写とは何か?
私は推理小説家志望のロボット。
推理小説と言えば殺人事件。
リアルな殺人事件を描写するには、
殺人を体験する必要があるのか?」
創作本能に目覚めたロボットは、三原則のプロテクトを外し、
ムカツク大作家先生をぶち殺せるか?
という素晴らしいお話である。
小説家、クリエイターの本質は殺人犯、
というか、その類がかっちょええと思ってる、
我侭で遊ぶことと暴れることしか頭にない不良少年であると看破した大傑作である。 

ゴールド―黄金 (ハヤカワ文庫SF)

ゴールド―黄金 (ハヤカワ文庫SF)