『虚空の遺産』 エドモンド・ハミルトン 安田 均 訳 ハヤカワ

ハミルトンの最高傑作である。

この作品を読めばキャプテンフューチャーシリーズはスペオペのパロディだということが、

否応なしに理解出来るであろう。

こんな素晴らしい作品を書けるハミルトンが、フューチャーみたいな話をマジに書くわけないのである。
本書は宇宙活劇SFではありません。

遥かな昔に銀河大戦で全滅した天界の王の遺産を求めにアルタイルへ行く話です。

宇宙戦闘はありません。戦闘行為を皮肉る為に白兵戦が一回あるだけです。

死ぬのはたったの三人です。

主人公はあくまでも言語学者であり、女に唆されて戦った後に、

敵を殺す可能性があった事に気付き(運良く気絶させる事ができた)、

女に対して、

「お前が戦えばよかったんだ!」

と詰るのです。女を守る為に人殺しをしてもヒーローは正しいという、

よくある主人公のアンチテーゼなのだ。

本書の中で一番の悪党は女である。

たった一人のパープリン女を守る為に、大量殺人するよくある主人公の愚かさは、

本書を読めば理解出来る。

人殺しが大好きな女は自分で戦いなさい。

誰が戦ってやるもんか!!