『時の門』 ロバート・Ａ・ハインライン 福島 正実 他訳 ハヤカワ

・大当りの年
・時の門
・コロンブスは馬鹿だ
・地球の脅威
・血清空輸作戦
・金魚鉢
・夢魔計画

どれもこれも面白くて、どれが一番と決められないので、
全部紹介してしまおう。
太陽が自殺して、夏が終わり、草が死に、魚が出てくる、
渚で、さなぎに、大当り！
という
究極の破滅ＳＦ「大当りの年」。
じゃなかった。
突如、街頭でストリップを始めた露出狂女を、
警察官憲の魔の手から救う為、
女装マニアと男装マニアの恋人達は、
主人公に協力を頼んだ。
”助けたってぇなぁーオビワン・ケノービ、おみゃーさんだけが頼りだなも”
うーん、これもちょっと違うか？

複数の自分が次から次へとタイムトラベルする
究極の時間ＳＦ「時の門」。
”時の門をくぐるんだ”
”くぐっちゃいけない！”
”くぐってしまった！”
”過去に戻って未来に備えよう”
”輪廻の蛇をたちきるぞ”
”やった、自分達の裏をかいたぞ！”
” 実は俺が彼だったのか！”
”こうもりさん、こうもりさん助けて！”
”ワハハハ、ロンブローゾー”

偉大なる馬鹿を清々しく描く、
究極の根性ＳＦ「コロンブスは馬鹿だ」。
”飛雄馬よ、ワシが辿り着けなかった巨人の星を、お前はきっと掴むのだ！”

地球の色情女の恐ろしさを月世界人の視点で描く、
究極の恋愛ＳＦ「地球の脅威」。
”彼が本当に好きなのはあなたなのよ、うふ・、
　私はドジでブスでノロマなネズミですもの”

壊滅の危機に瀕した冥王星基地を救うべく、
３・５Ｇの高加速に９日間耐え抜こうとする男達の、
強さと弱さを描く、
究極の方程式ＳＦ「血清空輸作戦」。
密航した少女は３・５Ｇのせいで顔がひん曲がり、
パイロットは何のためらいもなく船外に放り出しましたとさ、
メデタシ、メデタシ・・・。

１人目は、メイルシュトロームの大渦巻から脱出した。
２人目は、木星の大赤斑のメタンとアンモニアの大渦巻から脱出した。
３人目は、光子帆走船が受ける太陽風の大渦巻から脱出した。
そして４人目は、金魚鉢のＸ仮面の大渦巻からという、
究極の脱出劇ＳＦ「金魚鉢」。
”Ｘ仮面はわずか８日で変身を完了する。ではそのプロセスを見てみよう。”
”１日目、光あれ！”

反戦意識など持っているわけがない、
低知脳者どものエスパーを集めたアメリカの対ソ作戦を描く、
究極の右翼ＳＦ「夢魔計画」。
”あたし、うっすらパーですけど、超能力で人を殺せるんですの”

以上のように、いくらでもギャグにできる素晴らしい作品集なのだ。

時の門 (ハヤカワ文庫 SF―ハインライン傑作集 (624))