『エンディミオンの覚醒』 ダン・シモンズ  ハヤカワ

ハイペリオンシリーズ4作目にして完結編となる大傑作。

宗教・哲学・思想SFの最高傑作。

宇宙征服を目指す悪の組織がカトリック教会なので、

主人公達は仏教徒の組織を味方に付けるが、

敵との宗教問答の果てに、キリスト教も仏教も乗り越えた、

普遍的真理に到達する。
人間の精神活動のみならず、全ての生命活動の基本原則、

分子レベルの運動から、宇宙の天文学的運動まで説明出来る究極の真理。

それは、

「選べ、もういちど。」

という教えである。

キリスト教が正しいと思うのなら、一生信仰すれば良い。

しかし、捨てる自由、また信仰する自由を認めないのは駄目ぴょん!

ということである。

もっとも大切なものは、選ぶ自由。

選択肢の多い現象が正しいと言うか、それが自然の摂理なのである。

多様性が全ての根本原則である。

分子は様々な方向にブラウン運動し、

生物は遺伝情報を変化させ、多様な種に分化進化していく。

宇宙は膨張しながら、様々な星を生み出していく。

選ぶ行為が増え続けるのが、真理なのである。

「選べ、もういちど。」

という判りやすい表現では、ありがたみがないので、

宗教の教えとしては、いまいちだが、

Mr・マリックかユリ・ゲラーでも顧問に迎えて、

奇跡を演出出来れば、この本に基いた宗教団体も、

現実世界でけっこう信者を獲得出来ると思う(藁

宗教は現実の悩みも解決する必要があるが、

選択するさいに、選択の多くなる選択が真理だという基本原則は、

悩みの解決にも有効だと思う。

例として世俗的な恋愛相談で思考してみようか?

複数の男に交際を迫られて困っている場合。

全員と付き合うのが理想であるが、時間的に無理な場合は、

評価の選択肢を多く設定して、それに当てはまるのが多い男を選択すればいい。

長所が1点しかない男ばかりの場合は、

その長所に選択性(発展性)があるかを思考すればいい。

顔が良い男と心が優しい男と金持ちの男の場合は、

顔は老人になったら、醜いしわくちゃになるのだから、発展性はない。

外見だけの男は付き合う価値のある時間が、短かすぎます。

まず、第一に切り捨ててよいですな。

金がなければ、食料が買えなくて生きていけませんし、

金持ちだと、様々な贅沢が出来て、人生を多様に楽しめそうだが、

金が金を生み続ければいいのだが、

経済状況、政治状況の変化で、貧乏になることもありえます。

心、性格なんてものは、劇的に変化するものではないので、

やはり、心の優しい男と結婚するのが良いでしょう。

との結論が導きだされますね。

発展性とは変化するということではないのか?

優しいだけで、変化に乏しい男は駄目じゃん!

という考えも出来るが、悪い変化よりは、良い安定性、

良い変化、良き発展性を問題にしているということで(藁

相手の発展性と自分の発展性も合わせて考える必要がありますね。

相手が自分の可能性を高めてくれるか?ということです。

金持ちの男は、なに不自由ない生活させているんだから、

俺の夜のおもちゃとしてだけ生きていけばいい。

つまらん社会活動はするな!って言いそうだな。

心の優しい男は、妻の無限の可能性を認める気がします。

顔の良い男は、恋愛問題にしか興味がないような気がする。

見ていて気持ちいい見目麗しい男でも、甲斐性がないと、

妻が積極的に働く必要があります。

色事しか興味が無い男は、妻が職場で浮気しているのではと、

邪推するような気もします。

何故、人を殺してはいけないのか?

と主張して殺人を犯した馬鹿な高校生もいましたが、

人の命、人生には無限の可能性があり、

可能性を選択し続けるのが、生命の本質、宇宙の真理であるからなのです。

生きているからこそ、他人を殺す選択肢も選べるが、

殺された者には選択肢は無くなります。

殺す自由という選択肢があるという発想には、

人命より選択肢を重くみているようである。

選択肢に重みがあるのなら、他人の選択肢を奪うのは矛盾ということです。

自由な選択肢が尊いからこそ、他人の選択肢は奪ってはいけないのです。

自分の選択肢も他人の選択肢も増えるように行動するのが、宇宙の真理です。

他人の選択肢を認めないというのは、他人の人権を侵害して、

自分は人間を認めない、何もかも認めない。

世界も宇宙も滅びてしまえ!と言っているき○がいと同じようなものですよ。

美術ファンとしては、この本の美術ネタにも触れておかないといけないな。

敵がカトリック教会なので、システィーナ礼拝堂などが、舞台になります。

ミケランジェロ・ブォナルローティの「アダムの創造」「最後の審判

ラファエロ・サンツィオの「アテナイの学堂」

などが話題になります。

登場人物の薀蓄として登場するのなら、SFらしさはありませんが、

なんと、フランク・ロイド・ライトはサイバークローンとして登場して、

ヒロインに建築学を教えるのだ!

詩人のジョン・キーツのクローンも前々作に出ているから、

実在した建築家が登場人物の一人であっても、今更驚くことはないだろうが、

フランク・ロイド・ライトってマイナー過ぎるよな?(藁

もちろん、アメリカ人には、一休や良寛よりはメジャーだろうけど。

仏教ネタで一休や良寛の短歌まで出てくる教養溢れるSFです。

ダン・シモンズっていつからこんなに教養を身に付けたのかしら?

今日よう〜。

エンディミオンの覚醒〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)

エンディミオンの覚醒〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)

エンディミオンの覚醒〈下〉 (ハヤカワ文庫SF)

エンディミオンの覚醒〈下〉 (ハヤカワ文庫SF)