『三国演義』 安能務  講談社

道教の立場から羅貫中の間違いを正す決定版三国演義

権威ある(とされる)書物に書かれていることを鵜呑みにする学者馬鹿と違って、

民衆の生活視点の立場を大事にする安能先生のポリシーは素晴らしいのだが、

いくら民衆に受けたからと言って、

道教の超常現象も認めるのはサービスしすぎである。

読み辛い三国志演義を読み易くし、

明らかな地名や人名の間違いを正すのは評価出来るが、

現代小説として通用するような科学的な視点も欲しかった。

演義でありながら、劉備よりも張飛よりも軍師としては三流の

頭の悪い孔明を描く視点は新しい。
演義と同じエピソードで同じ作戦をしているのだが、

孔明が馬鹿だと見抜けず、千年も羅貫中に騙されていた我々こそ本物の大馬鹿だね(激)

北伐の謎はリアル解釈の中では安能説がもっとも説得力がある。

前書きに書かれているので前書きだけは立読みしよう。

私は蜀の辛い料理から逃げる為に孔明は北伐をしたというギャグ解釈が一番好きだが(笑)

楊脩は羅貫中版とほとんど同じで、

曹操の部下はみんな曹操を恐れていましたが、

楊修だけが、クイズやパズルで曹操をおちょくって、

曹操より楊修の方が頭が良かったことをしっかり描写してます。

楊脩が、曹操の本質は武人ではなくて詩人であると

看破するシーンはにやりとさせられる。

三国演義〈第1巻〉 (講談社文庫)

三国演義〈第1巻〉 (講談社文庫)