『天空の舟』 宮城谷昌光 文春文庫 上下巻

小説 伊尹伝 天空の舟 上 (文春文庫)

小説 伊尹伝 天空の舟 上 (文春文庫)

小説 伊尹伝 天空の舟 下 (文春文庫)

小説 伊尹伝 天空の舟 下 (文春文庫)

2作目にして、急成長した宮城谷昌光である。

序盤からぐいぐい引き込まれます。

成湯王の軍師になり、夏王朝を倒して商王朝の礎を築いた伊尹が主人公である。

生まれて、死ぬまでを余す事なく描写してます。
中盤は亡国の将の顎の話が続くが、誰が主人公なのか判らない「王家の風日」

に比べれば、明確に伊尹が主人公と言えます。

面白い戦闘が、上巻の前半は、各章に一回は有って、

ゲームみたいでワクワクして楽しめましたが、

中盤は戦闘が無くなってきて、萎えました。

終盤の大戦闘も描写が物足りない。

戦闘序列が明記されてないのが致命的欠陥である。

演繹出来なければ、帰納してデッチあげてハァハァする事も可能だが、

鳴篠の戦い以後の戦いの描写が一切ないのは、キツイ。

普通の小説として読んでも、エピソードやキャラクターやセリフや小道具の絡みが巧いし、

しっかり、主人公に感情移入出来る良い物語である。

英伝のヤンとユリアンのモデルは、伊尹と咎単ではないかと思った。

イイン?→イヤン!

キュウタン→ユリアン

おおっ、発音も似ている(爆)

エピローグに杖が再登場するのは、「星を継ぐもの」のエピローグで、

あの名が記された指輪が発見されるのと同じような感動があった。

と言っては誉め過ぎだな。