『カメレオンの呪文』 魔法の国ザンス① ピアズ・アンソニイ 早川文庫FT

カメレオンの呪文―魔法の国ザンス1 (ハヤカワ文庫 FT 31 魔法の国ザンス 1)

カメレオンの呪文―魔法の国ザンス1 (ハヤカワ文庫 FT 31 魔法の国ザンス 1)

ヒロイック・ファンタシイシリーズである。

シリーズ物でヒーロー物というと、

ただ面白いだけの活劇であろうという印象を抱くであろうが、

ザンスシリーズは一作ごとに、「えっ!」と驚く(「あっ!」と驚くものもあるw)

ラストが用意されていて良いのである。

ファンタシイの形をとったSFミステリですな。

「カメレオンの呪文」をハードSFならぬハードファンタジーと呼ぶ人がいたぐらいである。

私はハードというよりは論理的ファンタシイと呼んだ方が良いと思う。

SF関係に限らず、アクション物の常識を逆手にとったというか、

楽しむSFが嫌いな人に対して、読み取らせることに挑戦したというか、なんとも凄いファンタシイである。
現代のフロリダ半島にシールドに包まれた魔法の国ザンスがあった。

ザンスの生物はすべて魔法的生物(ドラゴン、ケンタウルスetc…)か、

肉体が普通の人間体の者は魔法の力をひとつだけ持っていた。

ところが主人公は魔法の力が成人しても発現しない!

25歳までに魔法の力が現れないと、人間界へ追放されるのが掟である。

かくして主人公ビンクは25歳になる一ヶ月前に、自分の魔法の力を教えてもらう為に、

良き魔法使いハンフリーの元へと旅立った!

最初の設定が巧い。主人公が登場人物の中で一番弱いできそこないなのである。

超能力者と超常的生物の世界において、単なる普通人を主人公に持ってくるとは!

魔剣を持つと強くなるとか、アンプリファイヤだったとかではありません。

主人公だから実は最強の魔法の力を持っていたのだが、

反則スレスレの無敵の魔法の力です。

馬鹿にせずに真剣に考えて読めば主人公の力は必ず判る。