芸術新潮1989年5月号・特集ルドンの妖しさ

ルドンの芸術の素晴らしさを語るには、ルドンの以下の言葉を紹介すれば事足りるだろう。

印象派にとって人間とは、その肉体の美しさや衣装の絵画的な面以上に興味をひくものではないのだから、

当然、印象派の描く人物には、精神的生命が欠けている。

画家が、時たまめぐまれた瞬間に表現するあの内的な奥深い生命が欠けている。

印象派のような安っぽく局限された追求とははっきり対立している真の芸術家は、

見られた現実が土台として必要であることを認めてはいるが、

真の芸術とは、現実のなかに感じられるものを描くことであるのだ。