『西洋美術の歴史』 H・W・ジャンソン+アンソニー・F・ジャンソン 木村重信+藤田治彦訳 創元社
情報価値の低すぎる本だが、魔が差して買ってしまった。
美術史の本としての批評はしない。
この本に出てくる画家で、突っ込みたいものだけに突っ込みます。(藁
●ドメーニコ・ギルランダーイオ:「老人と孫」
1480年頃,テンペラと油絵、板絵・パリ ルーヴル美術館
イタリア初期ルネサンス時代の絵とは思えない現代的な肖像画である。
この時代の代表作はボッティチェッリの「ヴィーナスの誕生」という猥褻画(藁
だが、ふざけた宗教画全盛の時代に、神の手先にならずに、老人と孫という
人間賛歌の絵を描いたドメーニコ・ギルランダーイオは、軟弱なイタリア人とは思えなくてビバである。
醜い痣がある老人の表情が素晴らしい!
●フランシスコ・ゴヤ:「カルロス4世の家族」
1800年,油彩、カンバス・マドリード プラド美術館
●フランシスコ・ゴヤ:「1808年5月3日」
1814〜15年,油彩、カンバス・マドリード プラド美術館
ゴヤはロマン主義者として扱われていて、この2作しか紹介されてなくて、分析が甘いが、
ゴヤを褒め称える名セリフがあったので引用する。
「理想的な様式とはミケランジェロの芸術とゴヤの芸術の総合である。」
と、ドラクロワは語ったんでおますよ、隊長!
●テオドール・ジェリコー:「メデュース号の筏」
1818〜19年,油彩、カンバス・パリ ルーヴル美術館
ジェリコーはこれのみ。
天才性以外に努力家でもあったと理解出来てビバである。
●カスパー・ダーヴィト・フリードリヒ:「北極海」
1824年,油彩、カンバス・ハンブルク美術館
フリードリヒもこれのみ。
几帳面なドイツ人は硬派でビバである。
●オディロン・ルドン:「無限の高みへと上昇する奇妙な気球のような眼玉」
1882年,石版画、黒刷り・ニューヨーク近代美術館
ルドンもこれのみ。
ルドンがゴヤのパクリもしている事に著者は気付いているが、
それは眼球怪物ネタではないだろう。
ちゃんと2人の作品名を提示してホスィ。
●エドヴァルト・ムンク:「叫び」
1893年,テンペラとカゼイン、厚紙・オスロ 国立美術館
もちろんムンクはこれのみ。
ムンクの素晴らしさを語るのに、フュースリなどという、小物を出さないで欲しい(藁。
●ジョルジオ・デ・キリコ:「街の神秘と憂愁」
1914年,油彩、カンバス・個人蔵
デ・キリコももちろんこれのみ。
というか、デ・キリコは初期作品が良かっただけだもんな、はぁ〜。
ロマン主義の遺産と解説されていたのには、なるほどと膝を打った,
私の好みはやはり、ロマン主義なのら〜。
●アンゼルム・キーファー:「無名画家のために」
1983年,カンバス上に油彩、乳剤、木版画、シェラック、ラテックス、藁・ピッツバーグ カーネギー美術館
反戦画家としてはゴヤを、風景画家としてはフリードリヒの意思を継いでいるが、
判りにくいのが難である。
タイトルが「無名画家のために」でなければ、
反戦絵画とは気付かずに素通りしてしまいそうだね(藁
戦争により、画家になる夢を奪われて殺された人々もいました。
平和な日本で、芸術を学べるいう幸福に、芸術関係の学生さんは感謝するように。
この本、ダリに触れてないのはびっくらこいた。
図版は400以上あるのに、感動出来る絵はたった9作品しか紹介されてません。
打率が悪すぎるるっす。