『感性の限界――不合理性・不自由性・不条理性』 高橋昌一郎 講談社現代新書

序盤の、無意味な数字に引きずられて不合理な判断してしまうアンカリング、
脳の中に心(判断システム)は二つ(利己的遺伝子に有利に働く心と個体に有利に働く心)ある。
との話題に引き込まれて一気読み出来るが、
限界シリーズの最後を飾るには、ネタが残っていない(前2作のネタも再考してます)せいか、
期待が強すぎたのでちょっと期待外れ。

決定論者も自由意志論者も納得出来る柔らかい決定論の考え方は良かった!

前2作に比べるとやっぱりちょっとセンスオブワンダーが薄い。
元ネタを先に読んでいたせいか、今回はこれに示唆される読みたい本が見つからなかった。

高橋先生のまとめ力は相変わらず天才的で、
苦労して読んだダニエル・C・デネットの『解明される意識』が
物凄く判り易く簡潔に紹介されていて唖然とした。

元ネタ知らない人は読みたくなる元ネタの本がいっぱい出て来るだろうが、
実は高橋先生のまとめ力が凄過ぎるので、元ネタの本読んでもコスパの面で損したと感じるかも(笑)

もっと芸術ネタの話の解析をして欲しかった。絶対音感や絶対色感、芸術家に精神薄弱や人格障害者が多いのは何故かなどを追求して欲しかった。

ラマチャンドランの神経美学を構築してくれるかと期待していたが、美学、芸術論は少なくて残念。

パネラーに芸術史家がいないのが解せない。高橋先生が一人であらゆる学問のパネラーを演じる限界を感じた。