『奇跡の巡洋艦』 ダグラス・リーマン 早川文庫NV

本書のベストセリフ

「女性には選択する権利がなければなりません。人が子供をつくるのには、ドイツ国家のために兵隊と母親をつくりだすということよりももっとましな理由があるはずです」

戦争小説なのにジェンダー観が素晴しい異色の作品。そして、イギリス人作家なのに、本作の主人公はドイツ側である。さらに戦争の花形の空母や戦艦は脇役で、主人公艦は重巡洋艦である。

実はこの作品の重巡洋艦がリーマンの主人公艦としては一番でかい。他作品では駆逐艦より小さい魚雷艇や沿岸警備艇が主人公艦だったりする。

捻くれたリーマンなので、素直なカタルシスのある戦争小説とは違うので、覚悟して読んで下さい。というか無理して読まなくていいけど(笑)

ジェンダーテーマなので、もちろん女性兵士も出てきますが、
女性を装甲版の無い剥き出しの機銃座要員にした山田正紀作品には負けてます。

本書に出て来るたった一人の女性兵士は、艦載機のパイロットである。
複座の偵察機なので彼女が機長で、男性が部下になることになるが、
この男性が女性の部下にされたことを屈辱に思い、
機長をそのうち強姦してやると思うのがリアルではあるが、
偵察任務中にもそんな事を考えていて偵察行為が疎かになり、撃墜される。

ジェンダーに囚われた男は一流の仕事は出来ないなと思いました(笑)