『歓喜の島』 ドン・ウィンズロウ 角川文庫

本書のベストセリフ

「物書きと芸術家はまっぴらだ、あんな卑劣な連中はいねえ」

表のルールも裏のルールも尊重せず、素晴しい創作物を作ると自惚れて増長したクリエイターを揶揄する素晴しい作品。

小説を貶す小説が面白くては自己矛盾と言うか、無駄な描写多くて、展開が遅くてつまらないように感じるのは、作者がワザとやってると理解します。
ふざけた物書きを暴力で叩きのめすのは簡単だが、それでは物書きの心は折れないので、序盤の主人公の探偵対小説家の詩作対決には拍手喝采した。
1958年が舞台なのでジェンダー観は古過ぎるが、ホモの味方が重要な活躍する場面は良かった。
元CIAの探偵が主人公だが、破壊工作員タイプではなくて、口の巧い事務屋タイプであり、
終盤、CIA、FBI、警察、上院議員の私設軍隊、謎の組織を敵に回しての逃亡中に、
こんなことになるのなら、銀行員にでもなって安全な人生を送るべきだったか?
との趣旨の愚痴を溢す個性溢れる主人公である。
物語の始まった時点では、主人公に殺人の経験はありません。
終盤の謀略戦は、知恵を使って敵同士を潰し合わせる展開。
中盤が物凄く退屈なので、それは覚悟して読んで下さい。
ウィンズロウコンプを目指す人は、コレは一番最後でもいいかも?

歓喜の島 (角川文庫)

歓喜の島 (角川文庫)