『影の艦隊』 山田正紀 トクマ・ノベルズ

本書のベストセリフ「わたしは男性の援助を受けて、それで生きるような、そんな暮らしを送りたくないのです」

ソ連の傀儡国家日本人民共和国(領土は北方四島)と日本が戦う斬新な仮想戦記。どちらの日本にも主人公クラスの日本人が配置されているが、敵が日本というのがさすが反日正紀である。

ソ連の傀儡政権「日本群島人民共和国」の駆逐艦波風はロシア人艦長に指揮され、朝鮮戦争に介入!アメリカ軍の戦艦ミズーリと戦う!駆逐艦波風には世界初の恐るべき装備が艤装されていた!!戦争小説はマチズモマンセーとなる傾向があるが、天才正紀なので、女を犯そうとする男はケダモノ扱いなのが素晴しいです。

1950年代を舞台にした仮想戦記だが、天才正紀なので例によってジェンダー観も素晴しい。男女平等の理想国家ソ連の傀儡国家「日本人民共和国」の影の艦隊には、もちろん女性乗組員も登場!安全なブリッジ要員や花形パイロットが女性というのは漫画、アニメレベルであり、本書は知的レベルの高いSF小説なので、剥き出しの対空銃座に女性が座る素晴しさ。ガンダムですら主砲でない対空銃座にネームドキャラが座ったのはカイ唯一人。

ソ連の傀儡として朝鮮戦争で暴れる日本群島人民共和国の影の艦隊にアメリカの属国の日本の新生海軍が襲い掛かる!ソ連の技術でパワーアップした震電の後継機震風vs零戦63型の空中戦発生!!日本人同士が殺し合う、さすが反日正紀の仮想戦記である。日本群島人民共和国を国家として承認しているのはソ連だけで、ソ連以外にとっては日本群島人民共和国の戦力は日本の武装テロリストでしかない扱いも巧いよね。国内のテロリストと戦うのだから日本の新生海軍の正式名称はもちろん警察予備隊である(笑) 

スターリンは間違ってる!」ソ連の傀儡の影の艦隊はソ連に対するクーデターを敢行。波風のロシア人艦長も拘束したが、アメリカの属国の日本の海上保安庁に攻撃され、日本人の新艦長は重傷を負う。指揮すべき副長は自身の能力不足に苦悩する。そして、前ロシア人艦長の明確な指揮に、波風は当然のようにロシア人を艦長として再び仰ぐ。アメリカも日本もソ連も敵に回しての、日本群島人民共和国の理想国家を作る戦いは続く。1巻からのキャラもドンドン死んでいき盛り上がってまいりました。

国家体制の軍隊の被害者の為に影の艦隊は活動する。朝鮮戦争で女をレイプする中国軍北朝鮮軍を敵とし、戦争孤児を救出する。朝鮮に原爆を落とそうと企むアメリカ軍のB36に震風は襲い掛かる。世界市民の為の義勇軍、それが影の艦隊である。が、戦力は消耗していく。国家の為でなく、世界の人民の自由と理想の為に日本群島人民共和国の兵士達は誇りを胸に死んでいく。理想を求めて滅びる運命か?それとも大逆転のハッピーエンドになるのか?最終巻にデラ期待が高まる。

「キルゼム」被害者の叫び声に応じて影の艦隊は戦う!今度の敵はカンボジアポル・ポト一味だ!だがポル・ポトが女子供に行った虐殺は影の艦隊の犯行とされ、カンボジアから帰還した影の艦隊に世界各国の正義の軍隊が襲う。時代は既にジェット機の時代、第二次大戦の遺物の影の艦隊は呆気なく壊滅?そこに現れる謎の戦艦。でも物語はここで終り。全ては1945年の上野の地下道で復員兵が見ていた夢なのか…。

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