『最後のプルチネッラ』 小島てるみ 富士見書房

本書のベストセリフ

「父上が出るドラマは、どれもこれも似たような話らしいですね。

不倫と裏切りと不治の病と生き別れの親子の再会」


父も母も俳優の演劇の貴公子の少年が

幻の芝居「最後のプルチネッラ」のオーディションに挑む!

ライバルは片親の貧乏な少年。

月影先生紅天女の生まれ変わりであったという

二千年の歴史を背景にした、ナポリ版「ガラスの仮面」 。

参考文献の日本の演劇関係者は竹内敏晴 先生だけという、

作者の演劇観が素晴しい。
演劇は癒しであるべきざんす。

自分の死もギャグのネタにして

他人を笑わせて幸福にしようとする感動の道化役者達の物語。

ナポリファンの作者がナポリの素晴しさを訴えたくて書いた小説。

ヴェスヴィオ火山が大爆発したら死ぬしかないナポリ市民だが、

明るく生きる姿勢はたしかに魅力的。

椎名誠のエッセイみたいな愉快な擬音を駆使した文体も面白い。

耽美系と期待して読んだのだが、

トランスセクシャルの問題はあんまり前面に出て来なくて残念。

シビラの洞窟ネタはタニス・リー を想起しましたが、

耽美というよりは童話に近いファンタジーです。

セクースシーンがあるので、お子様に勧められないのが残念。

開いた文が多い童話みたいな文体だが、

失業者達のデモシーンもある社会的問題意識の高さは、

萩岩睦美 の「銀曜日のおとぎばなし」 も想起した。

蜷川幸雄 は「ガラスの仮面」 を舞台化するより、

この作品に挑戦して欲しかった。

ナポリ二千年の歴史を描写するのに、

舞台背景が何度も暗転する必要があるので、

舞台化するのは難しいが、

蜷川幸雄 の芸術的な舞台セットが

使い捨てでクルクル変わっていったら凄ぇよなw

最後のプルチネッラ (Style‐F)

最後のプルチネッラ (Style‐F)